里山は徐々に秋の装いとなり、一面赤と黄色の山並みが広がっている。
 空は青く、その上を白い雲が気持ちよさそうに流れている。私もあの雲のように青空の上を旅してみたいなと思った。秋の天気はそんな気分にさせてくれる。

お日様の暖かい日差しと秋ならではのほんのり冷たい風、目をつぶればまるで空の上にいる気分。こんな時は、大きく息をしたくなる。何回もしたくなる。それぐらい秋の空気は魅力的。
  それに比べ夏の空気は暑くて息苦しくなる。冬は寒すぎて吸ったら体まで凍ってしまう。そう思うとちょうどいいのが秋なのである。




これは食いしん坊の私だからではない。みんな村のきれいな空気を目の前にすれば吸わずにはいられないに違いない。ひょっとすると大好物の桃よりもおいしいかもしれない。
  そして、秋の空気のすばらしいところは、桃と違ってお腹がいっぱいにならないところ。桃はどれだけおいしくてもお腹に限界がきてしまうけれど、秋の空気は吸っても吸ってもお腹がいっぱいにならない。果てしなく吸い続けることができる。まさしく吸い放題のバイキング。秋の空気も桃と同じように期間限定。吸えるうちにいっぱい吸っておかなければと思った。


しかし、ちょうどいいものは、長くは続かないもので、村の朝はもう冬の朝になっていた。外に出てみると冬の湯気が、はせがけした稲や畑の秋野菜から立ち上っていた。いつの間にか冬が近づいていた。せっかく今年は夏が気を使って早めに終ってくれたのに、もう少し冬も考えてほしい・・・・・

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