日に日に早くなる日暮れに秋の深まりを感じる。この季節の夕暮れは、色とりどりに輝く姿を見せてくれる。黄色にオレンジ、そして赤。本当にどの色も綺麗。ただ残念なのは、あっという間に終ってしまうこと。『秋の陽はつるべ落とし』とはよくいったものだが、美しい時間は短いからこそ価値あるものであり、この美しい時間を味わえることに感謝し、そして大切にしたいと思った。

 そんな秋の夕暮れ、真っ暗になるまで働いている村の住人がいた。それは今年晴れて村の住人となった「ニホンミツバチ」。
 ミツバチにはそれぞれ役割というものがある。外に蜜を集めにいく「働きバチ」、巣には1匹しかいない「女王バチ」そして、巣の中で働いている「雄バチ」。




 働きバチと呼ばれるハチは、たった1cmほどの小さなからだなのに何キロも飛び回り蜜を集めてくる。働きバチというだけに「オス」かと思いきや、すべて「メス」。それを知った時は正直おどろいた。でもあらためて分かった。どの世界も女性がつよいのだと。
  さらに驚くことに、働きバチは成虫になってわずか1ヶ月の人生を蜜をあつめるだけに費やす。自分の利益のためでなく、同性の女王のために働く。私には理解できなかった。ただ、働きバチの勇気や1つのことを全うする人生のすばらしさに感動した。そして、自分の未熟さ、甘さをあらためて感じた。

 普段なにげなく食べているハチミツ、スプーン1杯のハチミツがミツバチの一生であり生きた証かと思うと、もっと1口1口を感謝して食べなければと思った。
  それはハチミツだけに限らない。人間の生活は自然があるからこそ成り立つものであり、もっとそれに感謝するべきだ。ミツバチありがとう。自然ありがとう。
 でも私よりももっと自然にお礼を言ったほうがいいのはこいつ。毎日のように草をお腹いっぱい食べて幸せそうにしている八木橋だ。自然あるからこそ、草もあるのであり、だから八木橋も生きることができ、幸せを感じることもできる。八木橋に「お礼を言ったほうがいいよ」と一応言ったが、相変わらず草を食むばかりで振り向きもしなかった。
 でも、心の中では分かってくれているよね、八木橋。

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