氷に触れたような晩秋の風が、木の葉をあぜ道に敷き詰める。
時折、風に揺れる木の葉はまるで踊っているかのよう。そして枯れた落ち葉に混ざる色鮮やかなイチョウが一段と美しく見える横で私は肩を震わせる。
  こんな冬間近の村でコツコツと冬支度を進めている里山の動物がいた。

 それは「ネズミ」でもなく「ミミズ」でもない「ヒミズ」というモグラの仲間。
大きさは前から村に住んでいる「ヒメネズミ」と同じくらい。普通のモグラよりもやや小さめで、昆虫や木の実を食べる。驚くことに彼らは1日に自分の体重と同じくらいの食べ物を食べるらしい。早速自分に置き換えてみた。私の体重分のケーキはおいしそうだが、さすがにむねやけしそう・・・・




 そんなヒミズは視力を持たないため、嗅覚と触覚だけで食べ物を探す。人間でも鼻が良い人はいるけれど、ヒミズのようにピンポイントでその場所に辿り着くことはできない。そう考えると、ヒミズは本当にすごい。私もヒミズのような鼻があれば、地図がなくてもおいしいパン屋やケーキ屋、たこ焼き屋に行けるのに。
  こうやってヒミズは秋の間に必死に餌を集める。これはヒミズに限らず里山の虫達や鳥達、動物にも言えること。冬への厳しさに耐えていけるよう秋の恵みを蓄えるために一生懸命働いている。

 人間も動物であり、すべての優先は「生きる」ということであるけれど、その季節を楽しみ、その季節に感謝し、1日1日を大切に過ごさなければならないと思った。
  さっそく私は秋味のキノコをお腹いっぱい食べた。とてもおいしかった。でも秋だけで終らせないように干ししいたけにしておこう。

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