太陽に照らされる氷。
調整池の水は凍り、人が乗れるくらいの厚さになった。
白く、時には透明に輝く氷は言葉を失うほどの美しさがある。
また、透明な氷に映し出された冬空がキラキラ光りとても綺麗だった。それは今まで見たことのない空だった。

 しかし、この氷以上に透明でキラキラ輝くおいしいものがこの冬完成した。
それは、春の雨と書いて「春雨(はるさめ)」。名前の通り、春の雨に似ていることからこの名前がつけられた。
 ヘルシーということもあり今まで私も食べることは多かったけれど、春雨がどうやってできているか、何からできているか全く知らなかった。
栽培を始める時ですら、春雨の原料が「緑豆(りょくとう)」と分かったものの、どんな豆なのかも分からない。それもそのはず、「緑豆(りょくとう)」という作物自体、栽培が難しいということもあり、日本では栽培されていない。そのため、小豆や大豆と同じ豆の仲間ということを頼りに手探りで進めていくしかなかった。




 緑豆の花が咲くまでは、普通の豆の生長と大きな違いはなかった。最も変化を遂げたのは、花が咲き終わり鞘が出来始めた頃。豆が入っている鞘がなんと「真っ黒」。はじめ見た時はすべて腐ってしまったのかと、言葉も出ないくらい落ち込んだ。しかし鞘を開いてみると、綺麗な緑の豆がいっぱい入っていた。本当に嬉しかった。これでやっと春雨ができる、と。
 そんな安心も長くは続かず、春雨を作るにつれ安心は不安へと変わっていった。
緑豆から澱粉の粉を作っても、こんな真っ白の粉からあんな透明のものが果たして出来上がるのだろうか。何回生地を作っても春の雨のように透明で細長くならず切れてしまう。本当に春雨ができるのかと落ち込むばかりだった。しかしそんな失敗を何度も繰り返すうち、きれいな透明の糸が何本もでき始めた。
これこそ「春の雨」だと、声に出して言いたくなるような美しさ。美しい糸は凍らせることによってさらにコシが出ておいしい春雨となった。

 普段簡単に数百円で購入しているものが、自分で作るとこんなに大変なんだと思うと、 もっと春雨を有難く食べなければならないと思った。それは春雨に限らず、すべての食べ物に言えること。
 それにしても春雨はおいしいだけでなく、ヘルシーというところに心惹かれる。この春雨で私も今年は春雨のようにスリムになれるかな・・・・

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