「茹でて」「曲げて」「縫って」に挑戦した「曲げわっぱづくり」。
 これまでも役場、水車、風呂など木材の加工は数々してきたけれど、木を「茹でて曲げる」という作業は今回が初めてだった。

 木材加工自体が始めての自分としては、本当にあんな太い木が曲がるのか、曲がったところで上手くわっぱの形になるのか、と作る前から不安ばかりだった。でもそんな不安を打ち消してくれたのは明雄さんだった。
 わっぱづくりの修行に行ってきた明雄さんは、私たちに丁寧に作り方を教えてくれた。明雄さんの表情はいつになく真剣で、今までに見たことがない目をしていた。
 私とは比べ物にならないほどモノづくりの経験を持つ明雄さんが、いつもとは違う挑戦の目をしているのを見て、曲げわっぱづくりの歴史の深さ、職人が持つ技術の尊さを実感した。




 明雄さんの指導によって作業は進み、やっとのことで完成した曲げわっぱ。職人のように上手くはないけれど味のある私だけのわっぱ。ブサイクだけど自分のものが一番に見えた。今回の曲げわっぱで手づくりってこんなにも楽しくて、嬉しくて、有難いものなんだな、ということを改めて感じた。
 そんなわっぱで食べるわっぱ飯もまた格別な味で、とてもおいしかった。そしてほんのり湯気から香るヒノキのにおいは、夜の冷え込みで冷めた体を温めてくれた。
 湯気有難く感じる寒さの一方で暖かい春も着々と近づいていた。

水飲み場の「ふきのとう」はつぼみが開きはじめ、役場前の斜面からは春の花「水仙」が顔を出し始めた。水仙は火の見櫓のようにどっしりと茎を伸ばし、いつ咲いてもいい状態。まもなく黄色いラッパで一段と村を鮮やかにしてくれるだろう。
 水仙が咲いたらわっぱ飯のお弁当を持ってみんなで散歩にでかけよう。今から楽しみ。

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