「梅」と「桜」どちらが好きかと問うと、大半の人は桜のほうが好きと答えるだろう。世間も桜に比べると梅への注目度は低い気がする。その証拠にニュースなどで桜の開花予報はよく見るが、梅の開花予報はめったに見ない。 去年までは、私も桜派の１人だった。桜のほうが華やかで、ピンクでかわいくて、なんと言っても日本の春のシンボル。でも今年はそのシンボルを超えるものに気づいてしまった。

それは村の「梅」。今年も一輪の白い花が綺麗に咲き始めた。 それまで私の中では「梅干し」しか思い浮かばないほど梅の花に興味はなかった。 でも本当は「梅」には梅にしかない「美」があり、それは桜以上のものだった。 　桜は満開の木全体が美しいけれど、梅は一輪一輪近くで見ると、実はとても繊細で美しい。控えめな白い花におしべが花火のように黄色くまって咲いている、本当に綺麗。よーく見ると赤いつぼみもコロンとして可愛らしい。

そして私が最も梅に魅かれたところ。それは、冷たい風が吹こうと雪が降ろうとも、そんな雪風に負けることなく一生懸命咲いているところ。桜は風が吹けば一気に散ってしまうけれど、梅はまるでめぐり来る春を待つかのように、長く咲き続ける。本当に強い。人間でいったら完璧な女性だ。「地味だけど美しくて、でも根は強い」。私にはほど遠そう。それだけに「桜」よりも「梅」に惹かれてしまった。

北登もこの梅の美しさに惹かれたのか、梅の木の下で背中をこすってじゃれ始めた。その仕草はとてもかわいくて面白かった。おそらく梅に惹かれている私にもっとかまってほしかったのだろう・・・でも今は梅を見させてほしい、ごめん北登。