真っ青な空の下、花を咲かせるのは「ナズナ」。
白く小さな花をたくさん身につけ、風に揺れると春を呼ぶ鈴の音が聞こえてきそう。
 そんな春間近の村で、可愛らしいナズナを飾る花瓶が完成した。
それはただの花瓶ではなく村の砂から作った「ガラスの花瓶」。
「ガラス」は、私の中では白くて、透明というイメージがあった。でも村のガラスは全く違っていた。白ではなく「緑」や「黒」。黒に限っては不透明でガラスというよりはまるで漆黒の宝石のよう。

 でもこんな宝石の元が砂かと思うと本当に驚きだ。魔法がかけられたとしか思えない。
黒や茶色の砂が1300度の高温で溶けることで透明になる。本当に不思議だ・・・砂を窯に入れれば5〜6時間後には溶けて水あめ状になる。砂糖を溶かして水あめつくるのとはレベルが違うが、どうしても水あめに見えてしまう。おいしそう。そんな水あめはもちろん口に入れれば大やけど。1300度とはいかないがかなりの高温。でも水あめのような塊は温度が少しでも下がればすぐ固まってしまう。




 ガラスづくりは時間との勝負だった。固くなっては温め直して成形、の繰り返し。でもそれもそう上手くいかない。ガラスを吹くのも見た目よりすごい力が必要。なかなか上手く膨らまない、例え上手く膨らませても今度はうまく形ができない・・・・まるで生き物のようだった。
 そんな苦労の末、私だけのガラスのコップが完成した。
それは世界にたった1つのコップ。灰の中からガラスを取り出した瞬間、驚きと関心と喜びと色々な気持ちが一気に襲ってきた。自分達で集めた砂と自分達でつくり上げた窯で作った、自分だけのガラス。キラキラ輝いていた。「綺麗」という言葉だけでは言い表せない輝きと美しさ。角度を変えれば虹色にも輝く。コップは温かく、心地よい感触で、私の手にぴったりだった。

 それにしてもどこにでもあるような砂があんな綺麗なガラスになるのはやっぱり不思議。
でも砂がガラスのように綺麗になれるのであれば、私もまだまだガラスになるチャンスはあるかもしれない・・・・2007年4月、今年はガラスに負けないくらい輝きたい。 

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