役場に差し込む朝の光が私の頬を照らす。
頬にあたる光はなんとも言えない心地よさで私の眠りを誘う。できればこのままもっと寝ていたい。
 冬も「寒い」という理由でなかなか布団から出られないけれど、春は春でなかなか出られない。きっと春の心地よい暖かさがそうさせてしまうのだろう。

 有名な漢詩に「春眠暁を覚えず」といった言葉がある。「春の寝心地の良さに夜明けになったのも気づかない」といった意味だが、夜明けに限らず、朝だろうが、昼だろうが私は眠い。春の甘い香りとポカポカ陽気の中にいると眠くなってしまう。とにかく眠い。 ひたすら眠い。




 そんな眠い体を起こし、いつものように八木橋一家にご飯をあげる。それが見えてか、私が近づくと、八木橋一家全員は大きな声で「メェー」と鳴く。どうやら山羊たちは「眠気」よりも「食い気」のほうが勝っているよう。
 そんな中、北登にご飯を持って行くと、「散歩に行きたい」という目線で訴えてくる。
北登は「眠気」よりも「食い気」よりも「散歩をしたい」気持ちが強いよう。どうやら眠いのは私だけみたい。

 そんな眠り誘う春の午後、眠気を押して農作業をする私を尻目にさっそく昼寝をしているやつがいた。それは「八木橋」。
八木橋もこの暖かさには負けてしまったのだろう。どうやら八木橋は「食い気」だけでなく「眠気」にも誘われているようだ。
「おなかいっぱい食べて昼寝」
ちょっとうらやましい。

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