私には春、真っ先に逢いたくなる草花がある。それは「土筆」。
子供の頃、春になると毎日のように土筆を取りに行き、毎日のように土筆を食べていた。
そんな私の大好物が村にいっぱい生えているのを見て思わず食べたくなった。
摘んでも摘んでもなかなか無くならない土筆。たくさん見つけるとなんだか嬉しくなる。その土筆を甘く煮付けて食べてみると、なんだか懐かしい味だった。

 そんな土筆を食べた後待っていたのは和紙を取り込む作業。それも「真っ白な和紙」。
今年は杉でも白菜でもなく「こうぞ」という植物を育て、その皮の繊維を原料に「本当の和紙づくり」に挑戦した。




 こうぞの木の枝を蒸し、皮をむき、さらに黒い部分の皮をはぎ、白い部分の繊維だけを使う。もともと冬の仕事としてされてきた和紙づくりだけれど、冬場の水はとても冷たく、繊維についているゴミをとる作業はとても大変だった。でも、この作業が白い和紙を作るためには重要なポイント。かじかむ手に息を吹きかけながら最後まで頑張った。
 そのおかげで「シルク」のような綺麗な繊維が完成した。あとは紙を漉くだけ。でもこの「漉く」という作業もとても難しかった。はじめから和紙職人の遠藤ましこさんのように漉けるとは思っていなかったけれど、何回やってもしわがよってしまう。
見ているだけだと、ただ漉き枠で繊維をすくっているだけなのに、実際にやってみると本当にうまくいかない。

 やっとのことで和紙が完成し、天日干しする。板から剥がした白い和紙は、なんとも言えない暖かさがあふれていて、硬すぎず、柔らかすぎず、心地よい肌触り。そして、なによりも丈夫。これも「こうぞ」ならでは強さなのだと思った。
 そんな丈夫な和紙で作ったものは手作りの「うちわ」。今年の夏はこのうちわで涼しげな夏が迎えられそう。それにしても桜がつぼみの状態では夏が来るのはまだまだ先みたい。

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