太陽に反射してキラキラ輝くもの。
それは、3年越しの「天然氷」。私自身この氷をつくるまで、「氷なんて0度以下になれば勝手にできるもの」だと思っていた。でも、それは大きな間違いだった。

 まず、毎朝−5℃の中早起きをし、氷の表面をほうきで掃く。雪が降ったら氷に不純物が混ざってしまうので解ける前に雪かきをする。手が割れてしまうような寒さの中、「綺麗な透明な氷ができますように」と心を込めて氷を磨く。その時、ふと氷というのは「つくる」のではなく「育てる」ものだと思った。作物と一緒で毎日水をやったり、草をむしるのと同じ。毎日ゴミを取り、氷を磨き、丁寧に育てていく。寝ている間も氷のことを考えている。そんな毎日の積み重ねが、透明で溶けにくい氷をつくっていくのだと思った。




 それにしても天然氷を作っている方々はこんな気持ちを何十年も持ち続けていると思うと本当にすごい。氷池の氷づくりこそ自然とうまく付き合わなければできない仕事だと改めて感じた。
 そんなすごい仕事だけあって、初めからうまくいくものでもない。村の透明だった氷が雪のため半分白くなってしまった。白いということは空気が入り、溶けやすい氷になってしまう。ショックだった。せっかく透明で溶けにくい氷だったのに。でもこれが経験の違いかとも納得もできた。簡単にできるものであれば、日本の氷すべてが天然氷使用になっているはず。でも、やっぱり悔しかった。−5℃の中毎日磨いたことが無駄になるような気がして・・・・・。

 それでも私は私なりに頑張った。そして、なんとか163枚の氷を切り出すことができた。透明な氷ではないけれど、私達が精一杯気持ちを込めてつくった氷。そんな氷はキラキラと輝いてみえた。この輝きが太陽輝く夏まで続けばいいなと願い、小屋に氷をしまった。
 そんな思いが届いたのか、夏が来ても氷は37枚と少なくなったものの無事残っていてくれた。
 そんな氷からつくるカキ氷はまた格別な味がした。ふんわりと口の中で溶け、なんだかほのかに甘く、世界に1つだけしかないカキ氷。本当においしかった。
 でもここで満足はしてはいられない。来年こそは透明な氷をつくるぞ。

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