梅雨の間、聞こえていたのは「雨音」か「カエルの鳴き声」ばかりだった。
そんな中、新しい音が私の耳に入ってきた。
 それは「セミ」の鳴き声。梅雨明けを知らせるかのように鳴くセミ達。最近、雨の音しか聞いていなかった私にとってはとても新鮮だった。そして、真夏に聞くセミの声とはまた違っていた。

 真夏のセミは、暑い中「ジージー」大きな声で鳴き、余計に暑さが倍増する。夏を感じる音ではあるが、たまにその音が耳ざわりになる時もある。でも梅雨明けすぐに鳴いているセミは今まで聞いたことがない、とても優しい音に感じた。
 その音はどこから聞こえてきたのか、音を辿っていくと、里山でなくとうもろこし畑だった。とうもろこしを1本ずつ見ていくと、なんと小さなセミが止まっていた。おそらく「ヒグラシ」。ここぞとばかりに一生懸命鳴いていた。




 地上に出てから2週間ぐらいしか生きられないセミ。なんだかこんなに早く地上に出てきてしまって可愛そうだった。ひょっとすると夏のジリジリした日差しまで生きられないかもしれない。そう思うと申し訳なく思えてきた。私達は、一生のうちで何十回も夏を経験するけれど、セミは一生に1回しか味わえない。であれば、ジリジリの太陽の光を味わってほしかった。でもこれもセミの運命なのだろう。

 でも考えてみると、私達だって夏は何十回も来るかもしれないけれど、2007年の夏は1回だけで、一生で1度のもの。セミに負けないよう充実した夏にしたい。  
 生まれてから初めての夏を向かえる「さくら子」「うめ吉」も、きっとわくわくしているんだろうな。今年の夏は楽しみがいっぱいだ。

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