「夏は盆まで」とよく言うが、今の村はまさにそんな天気。
風はとたんに秋を運び、涼しい風が村を包む。
 そんな中、変わらないのが「昼間の陽射し」。小麦色だった私の肌は、毎日続くこの強い陽射しで、茶色どころか焦げすぎて黒色になろうとしている。この陽射しだけは盆を過ぎてもどうにもならないみたい。

 この陽射しの強さで、心配なのは村の「水不足」。連日続く猛暑で里山から流れる雪解け水も少なくなってきた。里山の植物や虫達の分はあるみたいだが、出穂間近の田んぼに入れる水がぜんぜん足りない。
 そんな時、私の叔父から「田んぼに水を入れる道具がまだ残っているよ」と聞き、急いで実家に向かった。その道具とは「足踏み水車」。叔父は若い頃は夏毎日のようにこの水車を踏んでいたらしい。そして、私の故郷では昔は1家に1台と言われるぐらい足踏み水車が出回っていたらしい。しかしはじめてその水車を目にした私には、どうやって使うのか全く分からなかった。むしろこの道具に人が乗れるものなのか、とさえ思った。叔父が使い方を説明してくれ、だいたいのやり方は分かったが、実際自分がこの水車に乗ると思うと、うまく踏めるのか、調整池に落ちてしまうのではないかと色々心配になってきた。




 そんなことを思いながら村に戻り、早速壊れている部分の補修をした。調整池に設置し、とうとう足踏み水車を踏むことになった。はじめは怖くて水車に乗ること自体が大変だった。でも予想よりはうまく踏むことができた。そして踏んだら踏んだ分だけ面白いように水が入っていく。田んぼのために私にもできることがあって、なんだかとても嬉しかった。そして、この足踏み水車を作った先人の知恵と技にあらためて驚かされた。
 しかし足踏み水車は予想以上に体力が必要で、続けて1時間と踏むことはできなかった。先人の体力にも驚かされた。

 普段はいつでも手に入る水だけれど、本当は当たり前にあるものではなく、自然の恵みがあってこそのもので、人の暮らしも生き物の命もすべて水でつながっているのだと改めて実感した。
 これからは、もっと自然の恵みに感謝しつつ、ただ水を待つのではなく、水を守れるように頑張りたい。

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