今年の夏は、去年と比べものにならないほど暑かった。でもその暑さは「白炭づくり」の熱さに比べたら、ほんとに微々たるものだった。
 1000度を超える登り窯の前にいると、汗が滝のように流れてくる。まるでずっとサウナの中にいるみたい。個人的にはダイエットにもなるし、一石二鳥とも思ったが、さすがにこの暑さには何度も負けそうになった。

 でも、この「白炭」ができれば、今まで以上に冬は暖かく過ごせ、秋の味覚もおいしく食べることができることを考え、ここで負けてはいられないと一人思った。そんな思いを胸に夏の猛暑の中、汗を滝のように流しながら一生懸命火を熾した。




 その甲斐あって、なんとか「白炭」が完成した。初めて作った白炭は、すべてが売り物の備長炭のように、とはいかなかったけれど、中には綺麗な金属音を奏でるほどいい出来のものもあった。そんな白炭を手にした時の喜びはなんとも言えないものだった。火をつけるのももったいなかったが、実際に使ってみるとその喜びは、さらに大きくなった。白炭で炊いたご飯は、ふっくらしてとてもおいしかった。まるで新米のようだった。これで新米を炊いたら世界一おいしいご飯ができるのではないかと思ったぐらい。そして、白炭で焼いたウナギは格別な味だった。外はカリッとしていて、中はジューシー。おいしいものの決まり文句のようだけれど、本当にその通りだからしょうがない。本当に白炭の力はすごい。使い終わった後の白炭はほのかに暖かく、また黒炭とは違う綺麗な白い灰が残っていた。この冬は白炭で冬恒例のしもやけができないことを祈りたい。

 本当に、木というのは一年中私達の心を癒してくれる。
夏は、暑さを和らげてくれるオアシスになり、冬は心も体も温めてくれる暖房器具になる。私達の生活になくてはならない存在。だから「休」という字は人が木に寄りかかっているのかもしれない。そんな暖かい木の恵をもっと大切にしたいと思う。

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