星空輝く夜、八木橋は天国へと帰っていった。
その夜は今までにないくらい綺麗な星空だった。それは、八木橋が私達にくれた最後のプレゼントだったかもしれない。
  でも、そんなプレゼントよりも、私は八木橋にもっと生きててほしかった。せめて私が一人前の村人になるまで。

 秋も終わりに近づき、冷え込みが厳しくなってきた頃、八木橋の様子がおかしいのに気付いた。いつもなら、私が近づくと突進するかのように近づいてくる八木橋が、横たわって全く動かない状態。そんな八木橋の姿を見て、はじめは信じられなかった。私は夢を見ているのだろう。そう思いたかった。でも次の日になっても八木橋は横たわったまま。
 毎日看病をし、少しでも草を食べてくれたり、水を飲んでくれたりするだけで、すごく嬉しかった。きっと元気になってくれるはず、大丈夫だと自分に言い聞かせていた。




 しかし、そんな願いはただの自己満足で、天までは届かず、八木橋は静かに息をひきとった。
涙が止まらなかった。4年間一緒にいた思い出はもちろん、衰えていく八木橋を助けてあげられなかった悔しさ。自分の無力さに対する苛立ち、色々な思いが涙となって出てきた。
  人間も動物もいつかは死ぬ時が来ると分かっているけど、いざ死を目の前にすると、やはり涙でいっぱいになってしまう。八木橋と私の付き合いはスタッフの時からで4年。8年生きたうちの半分は一緒に過ごしてきた。少し暴れん坊のところはあるけれど、愛嬌もあるかわいい山羊で村のシンボルだった。

 そんな八木橋がもう目の前にはいないと思うと、悲しくて悲しくて・・・何回言っても足りない。でも泣いてばかりでは前には進まない。そして、八木橋もそれは望んでいないと思う。
 そんな八木橋に私が今できることは、八木橋の分まで頑張ること。
 八木橋、8年間村を守ってくれてありがとう。そしてごくろうさま。これからは八木橋の分まで私が頑張ります。

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