桜待ち遠しい季節、ひとあし早く完成したのは桜模様の磁器。
手作りの自分だけの磁器。出来上がったそれを手に取った瞬間、今までに味わったことのない感動がこみ上げてきた。

 陶器を作ったことがない私にとって、磁器づくりは驚きの連続。
まず、茶色い石からあんな綺麗な白い器ができることに驚いた。
 陶器名人、長橋さんの指導の下、手探りで作業は進み、やっとのことで器の形はできた。できたとはいっても、本来薄いのが魅力の磁器なのに、私が作ったのはなぜか厚い。やはりそう簡単にはいかなかった。




 そして、磁器を作る中で最も重要な要素のひとつが絵付け。磁器の白さをより引き立たせてくれる意味でも絵付は重要な行程。ただ、絵があまりうまくない私にはこれも大変な作業だった。北登を描いたつもりがなぜかキツネになったり、「桜にはみえない」と明雄さんにいわれたり・・・。
 そんな苦労の結果出来上がった磁器の器。そんな器からは澄んだ「キーン」という高い音がした。これは陶器とはまた違った音。1つ1つ手づくりだからこそ、より私の心に響いた。

 これからは、陶器の皿に木のお椀、そして磁器の湯飲み、一回の食事で3つの食器を使える。こんなに贅沢な食事はないのかもしれない。
 そんな贅沢な食事を味わうことができる私は本当に幸せで、世界に1つしかない器を持てる私はもっと幸せなのかもしれない。

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