茶色に色付きはじめた山栗。今年はおいしい山栗が食べられるだろうか。
そんな中、私と明雄さんは年中行事の一つ、野菜の種まきをする。
すると突然、明雄さんが「もう秋の風だな」とつぶやいた。

明雄さんに言われるまで私も気にしていなかったけれど、確かに風はほんのり冷たく心地よい、秋のそれに変わっていた。
  毎年のことながら、やはり秋の風はとても気持ちがいい。夏の風のように蒸し暑くなく、かといって冬の風のように寒すぎることもなく、私たちを優しく包んでくれる。




 目をつぶって風を感じると、まるで雲の上にいるよう。実際に雲の上に行ったことはないけれど、きっと雲の上は大雨・強風や雷に影響することなく、常に柔らかい風で包まれていて、ゆとりのある世界だと思う。いつまでもこんな世界にいれたらなと思った。
  そんなことを思っていた矢先、冷たいものが頭の上に落ちてきた。雨粒だ。
急いで母屋の軒下に逃げ込んだ。突然の夕立であっという間に現実に戻された。私は、雲の「上」ではなく「下」にいるのだと。もう少しぐらい雲の上にいる気分にさせてくれても良かったのに。

 そんな時、明雄さんが再びつぶやいた。「秋の天気は変わりやすいからしょうがない」。確かにこの天気も今しか味わえないもの。今、この時期を楽しもう。

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