「キーン、キーン、キーン」と鍛冶小屋内に響き渡る高い音。
その正体は「銅鍋」。この冬、初めて挑戦した金属の鍋。
これまでにも、陶器、磁器、ガラスなど、色々な調理器具を作ってきたけれど、この銅鍋づくりは今までで一番といっていいほど根気が必要な作業だった。

 まずは、銅の廃材たちから一枚の銅板を作る。ここまでは鍬や鉈づくりの時の経験を生かしなんとかできたものの、直径20pほどの分厚い板を叩いて伸ばした後に鍋の形にしてゆくまでには何千回、いや何万回となくたたき続ける作業。




 しかも、はじめはただ単純に叩けばいいと思っていたが、この「叩く」という作業の奥深さと複雑さに驚いてしまった。もちろん叩く上でかなりの腕力が必要ではあるが、それよりも力加減によってシワができてしまったり、一回叩くと板が硬化してしまい全く曲がらなかったり、と微妙な力加減や叩く箇所、角度などに相当苦労した。
  そんな中、やっとのことで完成した銅鍋はとても綺麗だった。独特のあの「赤い輝き」をもった銅鍋。形は少しいびつになってしまったけれど、一枚の板だったものが丸い鍋に変わった喜びはとても大きかった。

できたばかりの銅鍋でつくったのは「ふきのとう」の天ぷら。まだ早かったのか、ちょっと苦みが強かったが格別な味だった。銅鍋は熱伝導率も良く、和菓子づくりにもぴったりの鍋。
これから沢山おいしい和菓子が食べられるかと思うと、今からわくわくする。

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