雲の隙間から顔を出す太陽。
そんな太陽のふりそそぐ光で、梅の蕾も膨らみ始める。
梅に限らず、春の花「まんさく」も満開を迎え、春本番まであと少し。
  そんな春間近の村で、「わらび餅」を味わった。

 しかし、その見た目には驚くしかなかった。
目の前にあったそれは黒のような緑のような、今まで見たことのない色の「わらび餅」だったからだ。
  私の中の「わらび餅」のイメージは、白くて透明な餅イメージだった。でも村の「わらび餅」は黒色。明雄さんに聞いてみると、「わらび粉で作ったわらび餅はこういう色なんだ」と教えてくれた。




 では私が今まで食べてきたわらび餅は、いったい何だったのだろうと思い、驚きつつも調べてみた。
現在市場に出ている「わらび餅」のほとんどは「サツマイモのデンプン」や「タピオカ粉」「葛粉」を主原料につくられているらしい。これが私が今まで食べてきた「わらび餅」。本わらび粉だけで作られた餅は1個何千円とするものもあるそうだが、その理由も分かるような気がした。
秋に自分達の手でわらびの根を収穫し、細かく刻み、何度も水を替えて、漉して、冬の間陰干しでゆっくりと乾燥させて、という作業はとても根気のいるものだった。それを考えると1個何千円でも安いのかもしれない。

手づくりの「わらび餅」は、もっちりとした歯ごたえで、そのくせ噛んでいるうちに心地よく口の中で消えてなくなる、今までに味わったことのない食感だった。そして消える前に、ほんのり春らしい苦味を感じた。これも本わらび粉ならではの味なのかもしれない。
春本番になれば、今度は山菜として茎の部分も味わえる「わらび」。今から楽しみ。

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