春の終わりを惜しむように咲いている今年の桜、最後の一輪。 華やかな満開の頃を思うと少し寂しい気持ちになったけれど、咲き残った一輪の懸命な様を見ていると、励まされるものもある。 淡いピンクを彩った桜の木には、日に日に若葉ならではの鮮やかなきみどり色が広がっていく。 今までは満開の桜が一番綺麗だと思っていたけれど、緑が一面に広がる葉桜も生命力にあふれた強さがあって、なかなかいいもの。 |
しかし、そんな緑あふれる里桜も年々樹勢が弱まり、今年も無事花を咲かせてくれるか心配するほどに弱っていた。 そこで、村のシンボルでもある里桜を絶やさないために、2年前から後継樹づくりに挑戦してきた。 1年目は里山に自生しているヤマザクラを「台木」、村の里桜を「穂木」にして、「接ぎ木」という方法で後継樹づくりに挑んだ。しかし台木との相性が悪かったのか、失敗に終わってしまった。 |
やはり後継樹を作るのは無理なのかと諦めていた中、樹木医の鈴木先生から「取り木」という方法もあると聞き、最後の望みをかけて去年「取り木」に挑戦した。ただ樹勢の強い若枝を使うので里桜自体に負担がかかると言われ、正直なところ不安ではあった。 幸いにもそんな大きな賭けは見事に成功し、ようやく村の里桜の後継樹に新しい命が芽吹いた。その葉に触れてみると、今までに感じたことがない柔らかさだった。 |
この柔らかい葉が緑濃い葉桜になるまでは何年かかるか分からないけれど、これからもずっと村の里桜を見ることができるかと思うと、ホッとした。もちろん親桜もまだまだがんばってほしいけど、来年はこの小さい新葉がもっと大きくなりますように。 |