緑・波打つ麦畑。
初夏を思わせる爽やかな風が吹くたびに、出穂を迎えたばかりの大麦の穂が「ざわー・ざわー」と音をたてて揺れる。
麦茶にもパンにもなる素敵な大麦の海。
寄せては返すその海の波は、時折太陽の光で銀色に輝いて見える。
本物の海の波にはない、ゆったりとした輝きはまるで踊っているかのよう。
それを見ていたら私の心も躍り出し、なんだか楽しくなってきた。

その嬉しさの源は深緑の大麦だけではなく、波を起こす風によるところが大きかった。
初夏の風は大麦(と私の心)を躍らせるだけでなく、色々なものを運んできてくれる。
  薫風とはよく言ったもので、花の甘い香りだったり、心地よい暖かさだったり植物の種だったり。どれも当たり前のようなことだけれど、本当はどれもすごいこと。




 植物の種も風があることで、色々な場所に種を飛ばすことができ、子孫を増やせる。村のタンポポが増えたのも、この風のおかげ。
  去年に比べ驚くほど増えた気がする。
  草花の香りも、風があるからより私達の近くまで届けられ、季節を身近に感じることができる。

 本当は、風に感謝しなければならないことは、もっとあるのかもしれない。
私も風のように、人を楽しませ、喜ばせ、幸せを届けられるような人間になりたい。

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