雨上がりの朝。
朝日に照らされたヤギ小屋の屋根から湯気が立ち昇る。
霜の降りる時期にはよく見た光景だが、初夏に見る湯気は初めて。なんだか新鮮な感じがした。真っ青な空に舞いあがっていくそれは北登にとっても珍しいのだろう、彼はじっと湯気を見つめていた。

 そんな中、梅雨入りを前にして雨が楽しくなるものが完成した。
それは「番傘」。私の実家が生産地の一つでもある「岐阜」だったこと、母親が嫁入り道具に持ってきたことなどから比較的子供のころから見かけることは多かった「番傘」。
けれど、まさか自分達の手で傘を作ることになるとは思ってもみなかった。
まずは岐阜に「里帰り」して傘屋さんに話を聞きに行くことになった。しかし傘づくりは完全なる分業制。行程によって職人さんが何人もいて、探すだけでも大変だった。




職人のみなさんの指導のもと傘づくりは始まったが、スムーズには作業は進まなかった。何回やっても上手く竹の骨が割れず、削れず、本当に傘ができるのかと心配になった。
 竹を割る作業、紙を張る作業、油を塗る作業、どれをとっても先人の知恵が隠されていて、傘を自分で作ることで、改めて傘の魅力を実感できた気がした。
 できた傘はいびつな部分もあったけれど、とても暖かい感じがした。
とりあえず見た目は完成となった番傘。後は、本来の目的である水をきちんと弾くか、それが最大の問題ではあった。

恐る恐る傘の上に雨を降らせてみると、不安を吹き飛ばすかのように綺麗に水を弾いていた。
番傘の上で踊る水滴を見た瞬間、鳥肌がたった。そして、改めて本当に傘ができたんだと実感できた。
 この傘があれば、これから毎日雨でもいいな。

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