「おいしいね」と思わず北登に声をかけてしまったその食べ物は「いちご」。
役場裏・ミツバチ巣箱前に開墾した自称『あんべ畑』で、つい最近まで緑色だった「いちご」が、あっという間に赤く染まり食べ頃を迎えていた。

 例年通り最初の実りとなったその味は、売り物のような甘さは無かったけれど、程よい甘さと酸っぱさがあり、とてもおいしかった。
でもよくよく考えると、赤く染まっている「いちご」はまだ1つ。もっとじっくり味わえばよかったと少し後悔した。




北登はそんな私を意にも介さず散歩の続きを促す。
村内を歩いているともうひとつの実りが。
 それは山羊小屋裏、一つ上の段の畑で作っている大麦。
 鮮やかな緑色から麦畑は独特の黄金色へと移り変わり、ほかの作物より一足早い「秋」つまり「麦秋」を迎えていた。

それは新緑のようなみずみずしい頃の麦の色とは違った美しさがある。特に大麦は小麦よりの粒が大きいためより鮮やかに、そして太陽に照らされてキラキラと輝く。その美しさに思わず見とれてしまった。
そんな中、北登は大麦の隣の小麦の葉をむしゃむしゃ食べ始めた。どうやら北登はいちごよりも大麦よりも、小麦の葉のほうが好きみたい。

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