「3年越しの新米で 傘寿の祝い」

 稲株だけが残る田んぼ。
毎年のことながらこの光景を見ると1年の終わりを感じる。
でも今年の田んぼは特別に見えた。
それは、3年越しの新男米をようやく口にすることができたからだ。
しかしここまでの道のりは簡単なものではなかった。
だから無事に収穫・乾燥が終わった今年の田んぼを見ていたら、この1年だけではなく3年間の色々な思いが蘇ってきた。

イモチ病に強い品種を作るために取り組んできた「新男米」づくり。
1年目、交配がなかなかうまく行かず、新男米の収穫量も数えられる程度の僅か787粒に終わり、この時改めて米の品種改良の難しさを実感した。
2年目は、そのわずかな種もみを増やした。
3年目の今年、ようやく田んぼの4分の3の面積に「新男米」の苗を定植することができた。




 そして今日、ようやく口にすることができた「新男米」。
3年間の思いが詰まった新男米は、「男米」よりも粒がふっくらとしていて、とてもおいしかった。3年間を思い出しながら1粒1粒を味わって食べた。
でも、私よりも1粒の味を噛み締めていたのは、今年で傘寿を迎えた「明雄さん」だった。
 2001年の「男米づくり」から携わってきた明雄さんには、私以上の思いがあったのだと思う。明雄さんが笑顔で新男米を食べる姿を見て、とても嬉しかった。

そして、傘寿のお祝いにと明雄さんのために作った「塗り箸」も「使いやすい」と気に入ってくれた様子で、「ウルシ」から採取した甲斐があったと少しホッとした。これからも明雄さんにはあの箸のように丈夫で、長く元気でいてほしい。
最後に、ここまで米づくりができたのも明雄さんの農業指導あってこそ、そう思うと改めて古の知恵には感謝しなければいけない。
 明雄さん、80歳本当におめでとうございます。そしてありがとうございます。

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