「待ち春 来らず」

3月になり、急に暖かくなった。
厚く積もっていた雪がほとんど融け、フキノトウがあちらこちらで顔を出し、福寿草の花が咲いた。
北登も春を感じたのか、冬毛が抜け始めていた。
村のあちらこちらが一斉に春めいて来た。

ものの本で知ったのだが、3月6日から春分までは二十四節気の啓蟄(けいちつ)という「大地が暖まり冬ごもりをしていた虫たちが穴から出てくる期間」らしい。
そんな言葉に安心し、上着を一枚減らした矢先、急に冷え込み大雪が降った。
どうも春はまだまだ先のようだ。




急遽上着を引っ張りだし、寒さに震えながら作業を行う。着る服が減って身が少し軽くなり、うきうきした気分になっていたのに、少し拍子抜けしてしまった。
明雄さんに聞くと「春になる前は一回暖かくなっても突然また寒くなるもんだ」と教えてくれた。
きっと昔から当たり前のように繰り返されていた事なのだろうが、それを今回体感し実感した。

この寒さはやがて終わり、雪が全て融けた頃に春はやってくるだろう。
雪景色はきれいで好きだったが、そろそろ桜が咲く暖かな春が待ち遠しくなってきた。

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