「火守終え タヌキと出会う 帰り道」 |
DASH村にやってきて一ヶ月が経ったある夜、僕はタヌキと何秒も目を見合わせていた。 南国ハウスの火守が一段落して母屋に向かう途中、右手斜面から何やら音が聞こえてきた。ランタンの灯りを向けてみると、2、3m離れた茂みの中でタヌキが僕を見つめていた。僕もタヌキを間近で見るのは初めてだったので、驚きのあまり足を止め凝視していた。 |
タヌキと人間が見つめ合う中、僕はある記憶が蘇ってきた。 小学校低学年の頃、朝起きると親に「タヌキが近くに来てしばらくそこにいた」と聞かされた。子供心に野生の動物が家の近くに現れたという事実に心が躍った。しかし起こしてくれなかったことによりタヌキを見る事が出来なかった僕は大泣きした記憶がある。一番人間にとって身近な野生動物の一つかもしれないタヌキでさえ見た事がなかった。 |
それから二十年近く経った今、僕はタヌキと見つめ合っている。この里山に野生動物が多くいるのは知っていたが実物を見るのはその時が初めてだった。ペット動物くらいしかいなかった今までの環境とは違い、DASH村は野生動物がすぐ近くで生活し自然に近い環境の中にあるのだと改めて実感させられた。 |
タヌキを見つめていた十数秒、僕がそんな事を考えている間タヌキは一体何を考えて僕を見つめていたのだろうか・・・。 |