「つなぎを揺らす 初夏の風」 |
天気は快晴。 数週間前に降った突然の大雪が嘘のように晴れ渡り、気温もぐんぐん上がった。村のあちらこちらで生物が活発に活動し始め、日々新たな変化の発見がある。例えば、やっと村の桜が一輪咲いたし、冬眠から目覚めたのか色々な種類のカエルが一気に増えた。 田んぼや畑の準備も着々と進む。 |
僕自身も風邪がすっかり直り、回復した。暖かくなり久しぶりにつなぎの洗濯を実行した。村長の横でごしごし、汚れを落とす。暖かくなって来たとはいえ、手作業で洗濯すると天然のわき水がまだまだ冷たく感じた。 |
どんどん溜まっていた水が濁る。濁っていく水を見ながら、この濃い数ヶ月を思い返してみた。村人になり立てから生命の誕生に立ち会い、露天風呂にも入れてもらった。そして、様々な物を作った。色々な事が初めてで戸惑った事もあったけれど、たくさんの人に助けてもらいやってこれた。 |
汚れが落ち、きれいになったつなぎを縁側に干す。真っ青の空の下、ちょうど良いそよ風に揺れる。またこのつなぎが汚れていくにつれ、貴重な経験の数も増えていくのかな。 日も落ち、乾いたつなぎを着てみたら、同じつなぎだけど真新しく感じ気持ちも新たにシャキっとする気がした。 |