「テンとシロ、初めての毛刈り」

村の桜もようやく満開になり、いよいよ迎えるテンとシロの毛刈り。
まず、僕は勉強も兼ねてヒツジの毛刈り職人に会いに行った。ニュージーランドの人だと聞いて、久しぶりに話す英語がちゃんと伝わるかどうか不安を抱えながらの初対面だった。けれど、いざ顔を合わせてみると毛刈り職人のロスさんは日本語がとても流暢だったので、少し拍子抜けしてしまった。

その場でヒツジの放牧と毛刈りを見せて頂いた。ロスさんは牧羊犬を使いあっという間にずっと遠くにいたヒツジを集め、巧みにコントロールしていた。僕は、そのすごさに感動した。それもそのはず、ロスさんは一匹を50秒で刈り、一日621匹ものヒツジの毛刈りをしたことがある達人だった。ロスさんのお兄さんもギネスの記録を12年間保持していた記録を持つほど。
そんな毛刈りの達人に来村してもらい、テンとシロの毛刈りを指導してもらうことになった。あの丸々としたテンとシロがどんな姿になるのか、想像してみてもその姿を見るまではうまく想像出来ず、わくわくが止まらなかった。




生憎の雨の為、母屋内で毛刈りを開始。まずテンがロスさんに抱えられ座らせられた。その体勢といったらベンチに腰掛けているかのようだった。僕の予想に反して全く抵抗する気配もないテン。テン自身、「いつも私、この体勢で座っているよ」と主張しているかのように、表情は穏やかだった。刈られている間も終止大人しい。やはり、毛刈りは人間が羊毛を頂く為だけではなく、羊たちの健康を守るために刈るという所も大いにあるように思えた。毛を刈られるテンを見るシロの視線もどことなく穏やかだった。
あっという間にテンもシロも毛が無くなった。その姿は・・・。

まん丸としたテンとシロを見慣れている僕としては、急に痩せてしまったみたいで、しばらく違和感があった。今まで首輪として巻いていた手ぬぐいもブカブカになり、二重に巻かないと引きずってしまうほど。
最初は心配したけれど、そんな必要はなかったと思えるくらいすっきりした表情で、今日も身軽に牧草地を疾走している、シロとテンでした。

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