「たとえば ボクが 蟻だったら」

たまにいつもと少し違った物の見方をしてみる。
いつも目にしているものを「自分が蟻のように小さくなったら」と想像して頭の中で思い描く。例えばこの時期、様々な場所にいるカエルは僕らからしたら片手に収まるくらいだけど、蟻にとっては恐竜並みに大きい存在になる。僕らには些細な事でも蟻にとってしてみたら大事になるのだ。だからきっと些細な小雨でも豪雨のように大惨事になるかもしれない。ただきっと楽しい事も多いと思う。とりあえず、僕はヒツジ姉妹のふわふわな毛の上で眠ってみたい。

こういう風に想像してみるといつも通りの風景がかなり違った世界になる。
梅雨の大雨が止んだある朝、北登を散歩させながら畑を抜け牧草地に向かう坂道を歩いていたら、大雨の水が流れて出来た溝が道の真ん中にあった。上から眺めると、それはまるで飛行機から見た川にそっくりだった。




里山や牧草地と色々な場所から流れて来た水は支流のように合流して一本の大きな溝を作っていた。これが一番深くえぐられた溝、いわば本流はかなり切り立っていたので、学生の頃に見たグランドキャニオンによく似ているように見えた。きっと僕が蟻だったら、グランドキャニオンを見た時の感動と同じ気持ちで溝を眺めていただろう。それ自体も地殻変動で隆起した大地をコロラド川が削って出来たらしいので、実際の所よく似ている。

蟻のように小さくなって見た世界を想像してみると、グランドキャニオンのように案外僕らが普段目にしている物と同じ物も多くあるのかもしれない。
雨が続く中、久々に北登と散歩をしつつ、少し違った角度でいつもの村の風景を見て楽しんでいた。

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