「響く、夏の音」

8月に入り、村の日中はいっそう賑やかになった。一番始めに鳴き始めたのはヒグラシだったが、最近はアブラゼミもミンミンゼミもよく鳴くようになった。

それぞれ鳴き方は全然違うが僕の中で一番印象深いのはヒグラシだ。村の場合、割と一日中鳴いているが、今までは日が昇ったばかりの明け方と太陽が沈む頃の夕方に鳴くという印象だった。
小学生の頃の夏休み、ラジオ体操や友達とクワガタを探しに行く為に早起きした時、いつもヒグラシが鳴いていた。そして、たくさん遊んで家に帰る頃また鳴き始めるのだ。それがずっと印象深く残っているので、今でも明け方や夕暮れに聞くとその頃を思い出し、その思い出に浸ってしまったりする。




そして、縁側では里山から聞こえて来る何種類もの賑やかな蝉の声に風鈴の涼しげな音が共鳴しながら響き合っていた。
軒下に掛けた風鈴がそよ風に吹かれる度に透き通った音を響かせる。縁側に座りその音を聞いていると一気に涼しい気分になる。冷風に吹かれている訳でもないし、冷水に浸かっている訳でもない。それなのに音を聞いただけで涼しく感じるのはすごいと思うが、音が涼しくさせるというのは、何だか不思議な感じがする。

以前、この日記の中で冬の音について書いたけれど、夏にも夏ならではの音がある。こういった夏の音は、時に暑さを倍増させるが、時に涼しくもしてくれる。さらには、色々な場面を思い出させてくれたりもするので、感傷に浸ってしまう事もあったりするのだ。聴覚でも季節を感じているんだなあとつくづく実感した。

前の週 次の週