「季節は巡り あれから一年」

雪も融け始め、動物も植物も虫もカエルも活発に動き始める季節。
寒さに震えていた時期を乗り越え、暖かく過ごしやすい季節が来た事に少し心が躍る。
村で迎える春は、好きだった。
冬が厳しい分、その反動が大きい。そして、村は自然との距離が断然近いので、あちこちで春の気配を感じられる。

今頃、村ではマンサクの花が咲いていて、福寿草やフキノトウなど春の山菜が顔を出し、ヤマアカガエルが求愛の為に必死に鳴き始めているだろう。
セミが鳴けば、夏だなと思うのと同じように、ヤマアカガエルが鳴き始めれば、春だなと感じる。
大地に野草が増え、木々は葉を茂らせ始め、一気に緑が増える。




あの日から、東京での暮らしが基盤になり始めて早一年。
この一年、どうも季節がいつの間にか移り変わっていたような気がしていた。
東京出身の僕は、それが普通だったので、気にはならなかったけれど、村で数年過ごした今では、その違いがよくわかる。
例えば、村だと夏から秋になる時、稲穂が青から黄金に移り変わり、足下に栗のイガが転がり始め、そして、夕方、扉のすき間から吹いて来る風がふと涼しかった瞬間など季節の変わり目を意識する時が多かった。
東京も好きだけど、こういうふとした瞬間に村での生活が恋しくなる。

あの震災から一年、今思えばあっという間だったけれど、何だか少し長くも感じた。
色々な産地で農業を学び、色々な経験をさせてもらい濃い一年になった。
けれど、あまりにも突然過ぎて、村でやり残した事も多い。もっと自分で体を動かして、野菜を作り、米も田植えから稲刈りまで自分で出来るようになりたかったが、それも今となっては難しい。
すぐに戻れると思っていたけれど、一年経っても依然戻れず、これからのDASH村も全くの不透明なのが現状。
けれど、村に僕たちがいなくても、当たり前に季節は巡り、春の息吹が少しずつ増えていく。
DASH村ももうすぐ春を迎える。

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