「人生彩る 千葉・房総の花栽培」

1〜3月までの一番寒い時期、白銀の世界に変貌する村では考えられないが、千葉県南房総市では、花の旬を迎える。東京から車でたったの2時間。肌寒い中、訪れた花畑を初めて見た時は驚いたけれど、なんだか感動した。
冬に花畑があるなんて信じられなかったというのもあったが、正直、花畑に行く機会もあまりなかった。今回、色々と花について学ばせて頂く前は、そこまで花に感心がなかった。当然、「綺麗だな」とかは思うけれど、花束を贈ろうとか花を部屋に飾ろうとか思った事がなかった。

村でも、花を植えた事はあまりなかった。けれど、品種にもよるが、花はコンパニオンプランツとして植えれば、病害虫などの対策になるし、そのまま土壌にすき込めば、作物の栄養になったり、土壌改良にも貢献するという優れものなのだ。花が美味しい野菜も産むことになる。もっと早く知っていれば、村でも試せたかもしれない。
商品としての花栽培の場合、花自体だけでなく茎や葉も全体を綺麗に保つよう細心な注意が必要になる。花は全体が綺麗でなくてはダメなのだ。
例えば、カラーは苞の部分が純白でないとダメな上、茎の長さや見た目の良さも重要になる。実際に収穫してみると、水田なので足をとられてすぐに転びそうになるし、中腰なので腰も痛くなる。思った以上に重労働だった。これを農家の鳥井さんは多い時で500本を一人で収穫しているというから驚いた。




そして胡蝶蘭は、栽培から管理方法まであらゆる面で効率的だった。ムービングベンチを使えば台ごと移動するので、500株を一度に運ぶ事が出来るし、決まった期間で一定方向に台が流れるので、ちょうど開花前の花を簡単に次のステージへ運び出せる。けれどいくら効率的とはいえ、出荷するまでは何年もかかり、花が一番過ごしやすいよう植え替えを行い、温度管理にも気を使いながら育成している。
どの花も買う人・もらう人が受け取る時点で最高な形で並ぶように栽培されているからこそ、それぞれの記念日を彩り、人々の生活にゆとりを与えてくれるという事を知った。

ミディー胡蝶蘭を栽培する椎名さんは、高級な花という印象が強い胡蝶蘭を気軽に楽しんで欲しいとコンパクトな胡蝶蘭を開発したそうだ。日常生活の中で一輪でも花を置いてみると、雰囲気はガラリと変わり、一気に和やかになるし、その場の空気も柔らかくなる。そうすれば、気分も良くなると話していたのを聞いて、興味のなかった僕の考えは、一気に「花は凄い」とか「花はいい」という思いに変化した。今まではただ単に花の魅力に気が付いてなかっただけだった。
こう思うようになると、人に花を贈りたくなるし、もらって嬉しいとも思える。別に、記念日でなくても、花を買う習慣を持てれば、もっと人生が華やかになるんじゃないかと思えるようにもなった。これからは、ぶらりと花屋さんに寄る機会も一気に増えるかもしれないな。

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