「熊本で出会った 極上トマトと極長なす」

僕は苦手な食べ物が多いのだが、その中でも一番はトマトだった。
どうもあのゼリー状の部分の食感がダメで、大学生までハンバーガーでさえもトマト抜きで頼むほどだった。小学生の頃には給食に出るミニトマトが食べられず、食べきらないと片付けられなかったので、いつまでも一人、給食の時間を終えられずにいた。周りの子は休み時間に入っているのに、一人になってしまい、ソワソワしたのを今でも覚えている。
そんな思いが頭の中を駆け巡りながら、僕はもぎたてのトマトと対峙していた。場所は、日本一の生産量を誇る熊本のトマト農家さんの畑。今では、ハンバーガーもトマト抜きにしないし、トマト料理は好きだったけれど、やはり生でまるごとかぶりつくのは、躊躇する気持ちがどこかにあったが、思い切って食べてみると、これが本当に美味しかった。

もぎたてのトマトは新鮮で、ゼリー状の部分もあまり気にならない。
「塩トマト」は干拓地で作られ、地下の塩水からの塩分に悩ませられながらも、それを逆手に取り生まれた高糖度トマト。もうフルーツだった。しかも、塩の影響で実が締まり、ゼリー状の部分もほとんどなかったので、何個も食べられた。これは僕にとっては、画期的な事だ。




そして、ナス。
ナスも正直、あまり好きではなかったが、本当にこれはただの食わず嫌い。こうしてみると、自分の偏食ぶりに、自分でもあきれる。
信じられないくらい長いナス「大長なす」は長い時で70cmを超える。関東ではおよそ15cmが一般的なので、5倍くらいはある。これが本当に美味しい。天ぷらにしても漬物にしても美味しいが、やっぱり何と言っても炭火焼だった。開いた瞬間、ナスの汁が溢れ出て、食べるととろける。ナスの概念が全く変わった。というか、ナス嫌いを一瞬で克服してしまった。それくらい美味しい。

今回お世話になった、大長ナス部会長の井村さんはこの大長ナスを全国に広める活動もしていて、この部会には多くの若い農家さんも所属していた。井村さんは40代だけど、井村さん以外はみんな20〜30代らしい。僕と同世代の方もいて、それぞれのビジョンとポリシーを持っていたのがすごかった。一様にみんなが言っていたのは、やっぱり収穫した作物を美味しそうに食べて喜んでくれる事が一番幸せという事だった。これに向けて、農家の方は日々頑張っているそうだ。
トマトもナスも家庭菜園などでよく栽培される作物ではあるが、栽培方法はいくつもあり、それによっては味も変わる。それぞれがそれぞれの農法で努力を重ね生まれる作物。トマトやナスを学びにいっているんだけど、作物から見られる地方の特色などもあって、そこから学べるものは広いと思った。そして、それらは偏食までも直してしまうのだ。

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