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武尊が闘い続けたパニック症 その原因と症状とは

2024.06.11 公開

K-1史上初の3階級制覇を果たした格闘家・武尊。 その陰で、日本では100人に1人ほどが発症すると言われているパニック症と闘っていた。誰にも言えず闘い続けた病の真実とは。再現ドラマで紹介した。

2016年末、武尊はK-1史上初の快挙を成し遂げ、スーパー・バンタム級とフェザー級の2階級で世界王者になった。武尊がこの世界を目指したのは今から25年前、K-1のテレビ中継に夢中になり、K-1が、日本中が注目するスポーツになってほしいという思いからだった。

自分がスターになってK-1を盛り上げる、それが武尊の大きな目標に。デビューしたころから、テレビ番組のオーディションに自ら応募するなど積極的にメディアに出るための活動をしていた。しかし、どんなにアピールしても初めの頃はテレビなどに呼ばれることはなかった。

だがチャンピオンになると状況は一変。どれだけ忙しくても、来る取材は全て受けSNSをフル活用してPR活動を行った。そんな武尊の知名度は徐々に上がりファンも増えたが、同時に自分の名前を検索するエゴサーチがクセになっていた。

完璧主義だった武尊は世間からの見られ方をかなり気にした。ネットには好意的なコメントが多かったが、一定数嫌う人もいた。武尊はその度になぜそう言われるのか考え込んでしまっていた。

一方で、K-1人気を高めるために練習の合間にノーギャラで全国の格闘技イベントに出たり、個人スポンサーに挨拶に行ったりと多忙な日々を過ごしていた。そんな過密スケジュールと睡眠不足、ネットでの誹謗中傷が武尊の心を蝕んでいく。

テレビ出演のためスタジオへ行ったとき、楽屋に案内された武尊は得体の知れない不安に襲われた。そして心臓発作のように心臓が早まり、死を感じる恐怖に襲われた。焦った瞬間、楽屋の外に出ると急に落ち着いてきたという。

以前から、武尊は小さい頃に押し入れから出られなくなった時の恐怖感が残っており、MRIなど閉ざされた場所が苦手だったという。それ以降なるべく狭い場所は避け、部屋では窓やドアを開けるようにして過ごしていた。

後日バラエティ番組でのリハーサルのため、スタジオのドアが閉まると息苦しくなり呼吸ができなくなった。そうなると今度は、この姿を誰にも見られない空間を探すためにトイレへと駆け込む。少しすると恐怖は多少残るものの体調は戻る。

そしてスタジオへと戻るが、いつまた症状が襲ってくるか不安を感じながら絶対にドアの方を見ないようにして収録を乗り越えたという。

やがて一番安心するはずの家の中でも発作が起きるようになっていった。武尊は、これは心臓などの疾患ではなく自分の心が作り出している症状だと気づいていた。しかしこんな状態の自分を知られたくなく、K-1仲間にも当時付き合っていた彼女にも母親にも相談できなかったという。

1991年、鳥取県米子市生まれの武尊。小さい頃は“泣き虫タケちゃん”と呼ばれ、姉や妹と一緒におままごとをする子だった。そして小学生の頃、大人気だったスイス出身の空手家 アンディ・フグに憧れ入門したのが米子市内にある空手道場だった。

高校生になるとヤンチャに成長。この頃、K-1中量級のチャンピオンとして脚光を浴びていたのが魔裟斗で、自分と同じくらいの体重でもスターになれるとK-1ファイターを目指し地元のキックボクシングジムに入門。

一方で生活態度が良くなく高校を退学になった。自分にはキックボクシングしかないと無茶な練習を続け、何も食べないといった極端な減量もあり、それによって自律神経が乱れ無気力や過食の症状が出るようになった。ただ、体重が増えることが許されなかったため飲み込まずに吐き出していた。やがて自傷行為を繰り返すようにもなっていった。

心配した母親が心療内科へ連れて行くとうつ病と診断され、そのとき処方されたのが抗うつ剤や抗不安薬。武尊はこうした薬を7年間もやめられずに飲んでいたという。 

その後、K-1のプロファイターとして活躍する武尊はようやく薬なしで生活できていたが、症状が現れ再び抗不安薬を持ち歩くようになった。もし、正直に誰かにこの症状を言ったら弱い人間だと思われてしまうと、誰にも言えず孤独感が増していった。

そして、自分の症状にぴったりの病名の記事に出会い、すぐに心療内科へ行き自身の症状を説明すると、やはり記事と同じパニック症だと診断される。

パニック症とは、ある日突然、動悸・呼吸困難・吐き気・手足の震えなどが起き自分はここで死ぬのではないかと思うほどの恐怖感に襲われパニック発作が起こるもの。通常の生活の中で、直接的なストレスのない時に予期せず発作は生じる。特に、閉ざされた空間など、すぐに逃げ出せない場所に身を置くと発作の引き金になることが多い。そしてその予期しないパニック発作が繰り返されるようになるとパニック症と呼ばれる。その原因は明らかになっていないが、これまでの研究から、脳が命を守るために間違って過剰反応してしまうのではないかと考えられている。

人間は何かに襲われるといった危険な目に遭うと自律神経の交感神経が優位になり、
手足の血流を増やし、早くその場から回避できるよう心拍数を上げ、沢山酸素を取り込めるよう呼吸を早くするなど体を臨戦態勢に入らせる防御システムがある。一度パニック発作を起こした人の中では、同様の場面などで脳が誤って危険と判断し心拍数が上がり、呼吸が早くなるなどの反応が生じるのではないかと考えられている。そしてこういった発作がまた突然起こるのではないかという強い不安に襲われ、それが引き金となってまた発作を引き起こすという悪循環に苦しむことになる。

SSRIというパニック症の治療薬を処方され、発作が起きた場合に飲む頓服薬も処方された。医師からはストレスが原因かもと言われたが、武尊には思い当たることがあった。

実は、発作が起きる前からあることでバッシングを受けていたという。同じ立ち技系、格闘技界の天才ファイター那須川天心のことだった。天心は武尊の所属するK-1ではなくRISEという団体に所属し、同じ階級で負けなしのチャンピオンだった。「武尊と天心、どちらが強いのか?」と世間の注目が高まる中、団体の壁は厚く対戦は実現せずにいた。その状況に武尊が逃げていると考える人が一部いて、誹謗中傷に繋がっていた。

しかし格闘技のマッチメイクは選手同士が決められるものではなく、他団体なので簡単に実現しない。だが「逃げている」と言われることはとてもストレスだった。こうしてパニック症はどんどん悪化していく。

この頃、目前に控えていたのが前人未踏の3階級制覇。しかし発作は毎日のように起こった。ひどくなるパニック症の発作に練習もままならず、試合ができるような状況ではなかった。

さらに天心がボクシング5階級制覇のスーパースター・メイウェザーと試合をすると報じられると「天心はメイウェザーとやるのに武尊は芸能人と遊んでる」「結局、武尊とK-1は天心から逃げた」などとアンチコメントが増えた。

スポンサーに挨拶に行っても「天心とやらないの?」と聞かれたり、取材では記者から「ファンから求められている対戦相手は天心選手だと思いますが」と聞かれるようになり、さらにパニック発作が悪化したという。

パニック発作は、ほぼ毎日1日に何度も現れ、眠れなくなった。そして試合直前でも症状が出るようになった。

そんな中、天心との試合から逃げていると言われているならだったら試合を自ら実現させる!と、武尊はスポンサーや中継をお願いする会社に出向き天心戦を自らプレゼンしに回った。発作が出そうな場所へ行くときは事前に薬を飲んでいたという。

さらに武尊は、天心の試合会場にも足を運んだ。すると「来てくれて本当にありがとうございます。一緒に格闘技を盛り上げましょう!」と天心も試合実現をアピール。その天心もK-1の試合を観覧。この二人の熱は少しずつ周りを動かしていった。

こうして2021年12月、ようやく2人の試合が決まった。武尊は試合に向けて準備を進めるうちに発作も以前より減ったという。試合は2022年6月19日、東京ドームにて開催。一進一退の攻防を続けラウンドは終了、その瞬間二人は抱き合った。武尊は判定で敗れた。約10年ぶりの敗北だったという武尊が会場を後にするとき、聞こえてきたのは「武尊ありがとう!」という声援だった。

この対戦から8日後、武尊は記者会見を行いうつ病とパニック症を告白。それは、少しでも世間がパニック症の理解を深め、生きづらいと感じている人が少しでも楽になればという思いからだった。

その後武尊は1年の休養を経て格闘技に復帰。去年6月、フランスでの試合では見事KO勝利、世界チャンピオンに輝いた。現在は海外の格闘技団体・ONEチャンピオンシップと契約。子供のころから夢見た世界最強を目指して戦い続けている。

スタジオゲストとして出演した武尊に「試合が終わったあと公表、解放されたことによって大分変わりましたか?」とMCの中居正広が聞くと「そうですね。ストレスの度合いが減ったのもあったと思うんですけど、症状はだいぶ落ち着きました」と話した。そして「でも試合前って減量もするし、追い込んでるので、そういう時はたまに(症状が)出たりはするんです。そういう時は薬飲んだりはするが、回数は減ってきていて以前とは変わった」と現状について明かした。

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