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頂き女子りりちゃん 男性を手玉にとり大金を騙し取った手口とは

2025.04.01 公開

動画配信を続け、自らを「頂き女子りりちゃん」と名乗っていた女。騙し取った金額は1億5000万円以上。金をだまし取るテクニックをマニュアル化し、SNSで拡散・販売。一部の女性の間でカリスマ的存在になっていた。

彼女のマニュアルを参考にした同様の手口で、男性をだます犯罪が次々と発生。「頂き女子りりちゃん」こと渡辺真衣受刑者は一体どんな手口で、どんな犯罪を犯したのか。裁判資料、本人の証言、被害者や関係者の取材などをもとに、その実態を再現ドラマで紹介した。

2023年4月、関東のある町で働く男性は同僚から勧められマッチングアプリを始めた。この男性は当時50歳。長年交際していた女性とは最近別れたばかりで、両親もすでに亡くなり孤独な生活を送っていた。

若い女性に「いいね」ボタンを押した男性。すぐに彼の「いいね」に返事が来た。それは24歳という若い女性、つまり渡辺からだった。自分には若すぎると感じつつも男性が丁寧なメッセージを送ると、すぐに返事が来た。

「私もあなたのことたくさん知りたい。でも、男性はこのアプリでのやりとりだと課金でお金必要ですよね?もしよかったら、LINEのID教えてください」というもので、男性はその親切さに好感を抱きIDを教えた。

LINEを交換するとすぐに連絡が来た。渡辺は「映画は誰と行くんですか?友達多いんですか?いいなあ」と男性の日常に興味を示す返信をし、さらに相手の孤独を確認した。すかさず「いいですね1人映画。隣いたら邪魔ですかね?」「いつお休みですか?」と畳みかけたのだ。

渡辺はさらに「いきなりだけど...明日は暇」と踏み込んだ返信をした。この一連のやりとりで、男性には彼女が清純でピュアな女の子に映っていた。

しかし渡辺は同時に、SNSで「エースおぢこい」「私がもらって嬉しいのは現金なんだよぉ!」などと過激な配信をしていたのだ。彼女はすでに何人もの男性から金を奪っており、「今日の給料」として金額を晒していた。

マッチングアプリで知り合った翌日、男性の前に現れた渡辺は清楚で可愛らしい姿。彼女の姿は、万が一男性が彼女のSNSを見ていたとしても、同一人物だと気づくことはできないほど違っていた。

会話で「この小銭入れも100均で買いました」と彼女は質素な生活をアピール。男性は「金目的で近寄ってきたのではない」と安心したという。そして別れ際、渡辺は「親と仲悪いんだ。うちも飛び出してきて...」と告白。

翌朝、渡辺から「おはよ」というLINEが。彼女のマニュアルには「毎日送り続けると、相手の方が毎日のルーティーンの一部になって、向こうから送ってくるようになる」とあり、予想通り男性からLINEが届いた。

やりとりがルーティン化したら今度は返事をせず、相手を焦らす作戦に。さらに「身体が弱い事をアピールしておくことで...お金のことで病んで返信できないとなった時に、『僕がなんとかしてあげる』って展開に持っていける」と、一切お金の話をせずに、男性から「助けたい」と言わせる心理的な準備が進められていった。

LINEでのやり取りでは、「かわいいLINEスタンプを送ってそのスタンプを自分だと思わせる」という手口を使っていた。また渡辺は決して「付き合おう」という言葉を使わなかったという。代わりに恋人関係を錯覚させる巧妙な言葉遣いをした。

恋人気分が十分に高まったタイミングで、「会えなくなったら悲しい?」などという不安をかき立てるメッセージで渡辺は新たな心理戦に出る。さらに「まい、1回いなくなるかも」と続けられ、男性は焦って「どうして」と尋ねる。この手法について渡辺は「恋愛感情を抱き始めたら、今度は理由をはっきり言わず不安にさせ、相手から聞いてくるように仕向ける」と説明している。

予想通り男性は「話聞かせて」と心配する。彼女は「夜の仕事しなきゃいけないかも」と返す。

金の要求は渡辺からはしなかった。男性の方から「借金?」と聞き出させるのが彼女の戦略だった。自宅に招かれた渡辺は、男性の経済状況を冷静に分析。「結婚資産はあるかも」と心の中で計算していた。

そして渡辺は「私が体の一部になってあげて、支えていきたいって思ってたよ」と男性の弱みを突く。実は男性は体の一部に難病を抱えていた。

渡辺はさらに「家庭環境が複雑でね...DVも受けていた」と語り、「縁切るって親に言ったら...これまでの養育費として、800万位払えって」と続ける。驚く男性に、渡辺は「ごめんね...やっぱり自分でなんとかする」と言いながら涙を見せるが、男性は「800万すぐには用意できないかもだけど、200万ぐらいならすぐに...残りはあとで銀行に確認してみるから」と申し出る。こうして男性は大金を払ってしまった。

「頂き女子りりちゃん」こと渡辺は、1998年神奈川県で生まれた。彼女はひどい皮膚炎を患っており、服をはがす時には激痛を伴った。学校では心ない言葉を浴びせられ、人とコミュニケーションをとることがほとんどなくなった。

家でも父親とは会話することはほとんどなかったという。そんな彼女が夢中になったのは「魔法少女」への憧れ。現実の自分から魔法少女に変わりたかったという。中学生になっても自分から輪の中に入ることができず孤独で、SNSで自分を求めている人を探しては会うようになった。高校卒業後、動物の専門学校に入るが中退。地元で仕事を始めるも続かず東京で風俗の世界へ。ここでは「自分が求められている」「生きている存在意義を感じていた」という。

渡辺は、友人からホストクラブに誘われた。ホストたちとの出会いが渡辺の運命を変えることになる。

ホストは彼女を笑わせてくれ、こんな楽しい経験は人生で初めてだった。そしてお金が貯まると、お目当てのホストにつぎ込むようになった彼女。自分が必要とされていることが嬉しかったといい、やがて担当のホストをナンバー1にすることが渡辺の生きがいとなっていった。

ホストにハマった渡辺は、風俗で知り合った客に手当たり次第、支援をお願いしていた。多くの拒絶に精神的にすり減っていく彼女だったが、そんな中「どうしても夢叶えたくて...頑張りたいのダメかな?」と伝えると、ある客がいきなり20万円を振り込んでくれた。彼女は「この作戦、使えるな」と確信した。

ホストがしてくれたことで自分が嬉しかったことを元に、どういう風に持っていけば男性はお金を払ってくれるのか分析するようになり、男性から払われた金額も増えていった。ここから、りりちゃんこと渡辺の「頂き生活」が始まる。

ホストクラブでの支払いが増えていくにつれ、ホストも彼女の変化に気づく。ホストの「マニュアルにしてまとめてみたら?売れるよ!」という言葉通りに自分なりに分析しお金をもらえるテクニックをまとめていくことになる。

男性たちからの金で毎日のようにホストのもとへ通い、お気に入りのホストが辞めていなくなっても、次々と他の男性からお金を引き出した。

新しいホストに「これから俺をもっと応援してくれるよね?」と言われ応じた彼女は、ついに自分のノウハウをマニュアル化。男性たちから金をだまし取るテクニックをまとめたマニュアルを、自らを「頂き女子りりちゃん」と名乗り、1万〜3万円で販売した。

2021年3月、渡辺はあるホストと出会った。「若いうちにホストで稼いで稼いだ分は投資に回す」とホスト。渡辺は感心し、ホストは「どこまでできるか、チャレンジもしてみたいしね。よかったら応援してよ」と返した。このホストをナンバー1にさせるため、渡辺の「頂き行為」はエスカレートしていく。

一方、彼女が作成したマニュアルを見た若い女性たちからの反響は大きかった。相談されることが嬉しかった渡辺は、相談してきた女性たちには無償でリターンしたり、会ってアドバイスすることもあった。

渡辺は男性のタイプを「テイカーおぢ」「ギバーおぢ」「マッチャーおぢ」と分類した。テイカーおぢは自分の利益を優先に考える人。最初のやりとりで自分の欲だけを求めてくる人だという。ギバーおぢは、人に何かを与えることを優先に考える人。自分より他人の方を心配するため、このギバーおぢを見つけられるかがポイントということになっていた。マッチャーおぢはその二つの中間の人だ。

「信頼関係を構築する上でやるべきことはおぢに世界で一番特別だと思わせる会話とか行動をしてあげること」としていた渡辺。例えば、LINEを交換する時には初心者の様子を演出し、「普段はLINEしない子なんだな」という印象づけをしておく。そして、おぢからLINEが来たら即レスすれば、「特別感が増して、おぢが喜ぶんだよね」と渡辺。また、「感情を付け足してあげる」ことで、男性の心を掴みやすくなるとした。

さらに「デート楽しみ...その時おそろいの服着て行きたいね」「たくさん写真撮ろうね」など、二人の未来を想像させるメッセージを送り、男性に妄想させるという。恋人のようなやりとりを積み重ね、交際している気分に浸らせたら突然連絡を途絶える。すると予想通り「力になるから1人で悩まないで」と男性から申し出がくる。そして「実は嫌な人からずっと連絡きてて」と切り出し、「何があったの?」と男性が食いつくと「言いたくない、嫌われたくない」と演技する。

「話して」と男性が懇願すると渡辺は借金の話をしたという。借金の話をした後は「いったん、お金の話から離れることが大事」とし、男性に「私がんばるね」と金銭的支援を直接求めることなく、男性から「お金は用意してあげてもいいと思ってるから」という言葉を引き出す。

出会った日をメモしておいて抜かりないようにするのも彼女の手法の一つだった。また、渡辺は同時に数人の「おぢ」に頂き行為をしていたが、犯罪の意識はあまりなかったのか、アシがつく危険がある自分の口座を教えて金を振り込ませていた。

一方で、「俺が今までどれだけ大金払ったと思ってんだ」と騙された男性に怒鳴られると、精神的に追い詰められる。「メンタルボロボロ。私のやってることって捕まるの?」と不安を吐露した渡辺に、ホストは「捕まる時は俺も一緒」と伝えた。

そしてホストには一晩で1000万円を使い、さらに一年後には、なんと2700万円も一晩で使った。渡辺の名はホストの世界で広まり、騙し取った大金の画像をSNSに投稿するとフォロワーも増えていった。こうして彼女は一部の若者の憧れの存在になっていった。

若者たちの期待に応えるかのようなカリスマ的キャラクターを演じ、YouTubeでも動画配信を始めた。彼女は「人妻JKりりちゃん」と名乗っていたが、実は人妻と名乗っているのは嘘ではなかった。金が欲しくて、外国人との偽装結婚のために籍を売っていたのだ。夫はどこにいるかもわからないという。さらに彼女は「5年連続詐欺被害届0件プレイヤー」だと自称していた。

実際に、大金をだまし取っても被害届を出されることはなかった。従来の詐欺とは一線を画す手法とは、一体何だったのか。

例えば50代の男性は、初対面の日に彼女に手を握られ、交際していると錯覚。彼女の「親からの養育費請求800万円」という話を信じ、200万円を振り込んでしまう。

「大金なので家族に振り込んだら証拠見せてね」「可能なら借用書書いてもらっていい?」と念のため確認を取った男性だったが、渡辺は「うん」と返事をしたあと、連絡を絶ち翻弄。男性は焦り、怒りを募らせる。痺れを切らした男性が「借金なんて...俺を騙したんだよな」と怒りの電話をすると、渡辺はずっと泣き声だけを聞かせ、責められると「昔DVとかやなこと色々あって、そうやって怒鳴られるのも...昔を思い出しちゃって怖いよ」と話した。

「まいのこと忘れて、お金は返すから」と罪悪感を植え付けるセリフを繰り出し、さらに「ごめん」「つらい」などのメッセージを送り、自分のせいで彼女が壊れてしまったという罪悪感を男性に持たせる。

しばらくすると渡辺からは「好きだよ〜」という動画が送られてくる。こうして、初めに払った200万円を取り戻すどころか、男性はさらに600万円を振り込んでしまったのだ。

こうして一度ハマってしまった男性に対し、10日後再び渡辺の態度が変わる。「うそついてごめん」「まいとやっぱはなれたほうが」と、1500万円が必要だという。さらに「たぶん、たりないからもういい」などと、男性の不安を煽るようなメッセージが届く。

そして「利息分もあって返済額はもっと必要」と説明され、最終的に要求してきた額は2714万円だった。その後も「別れる」「夜の仕事をする」などと男性に送り、相手に追い込ませ、振り込みを促す渡辺。最終的に男性は保険を解約して2680万円を振り込むことになる。

振り込みの際銀行では、「2000万円を超える高額な振り込みになりますので、警察の方にも」と注意され、「振り込め詐欺等の犯罪防止のためご協力お願いいたします」と警官から声をかけられる。渡辺について「失礼ですがご関係は?」と問われ、男性は「結婚を前提に付き合ってます」と答え、なぜ大金が必要なのかを正直に説明した。

「彼女と電話はつながりますか?」という警官の確認に応じ、警官が「失礼ですが、お金が必要になった理由を教えてもらえますか?」と渡辺に電話で尋ねる。もしこの時、渡辺の口座やSNSを調べていたら、様々な高額入金や頂き行為が発覚したかもしれない。だが、そうした調査はなされず、振込が行われた。

なぜ渡辺は、これほどの大金を巻き上げても被害届を出されなかったのか。今までの詐欺師と大きく違うところは、大金を奪っても姿を消すことはなかった点だ。全ての「おぢ」たちとずっと繋がっているので、男性を安心させることができ、被害届を出す人はいなかったのだ。その後も「金を借りた男への利息がまだあった」「携帯の滞納で連絡取れなくなる」など様々な理由をつけて、男性の全ての財産をむしり取っていった。

頂き行為に絶対の自信を持っていた渡辺だが、予期せぬところで危機が迫っていた。それは名古屋のある女子大学生がきっかけだった。

「私...友達の保証人になってて払えなかったら、アダルトビデオに出るしかないって...」と泣きながら男性を騙す大学生。彼女もマニュアルを購入し、頂き行為をしていた。しかし、この大学生はマニュアルから外れた行動をしてしまう。

「借金っていくらなの?」と尋ねる被害者に「183万」と答え、泣きつく大学生。男性から金をだまし取った後、アフターケアをせず連絡が取れなくなってしまったのだ。

すると、被害者は彼女が大変な目にあっているのではと心配になり、警察へ捜索願を届ける。その後捜査が進み、渡辺のマニュアルを参考に男性を騙したこの大学生は詐欺罪で逮捕されることとなった。逮捕後「このマニュアルを知ってるね?」「1年ほど前に購入したね?」という質問に「はい」と答えた大学生の供述から、警察は渡辺への捜査へと移っていく。

2023年8月24日、冒頭の50代男性が渡辺と出会って4ヶ月後、男性に知らない番号から電話があり「渡辺真衣という女性は知っていますね?」という質問があった。

実はその前日に渡辺は、マニュアルを作成し詐欺の手助けをした詐欺ほう助の罪で逮捕されていた。そして、渡辺の携帯から頻繁にやりとりをしていた男性に警察から連絡があったのだ。男性は、総額約3800万円以上を奪われていた。

逮捕された時、渡辺は携帯電話8台を持っており、所持金はわずか1万円ほどだったという。

2025年1月16日、最高裁が上告を退ける決定をしたことが明らかになった。渡辺は、少なくとも3人の男性から約1億5600万円をだまし取った詐欺罪、詐欺ほう助、所得税法違反の罪で懲役8年6か月、罰金800万円の判決が確定した。

渡辺が指名していたホストならびに店の責任者も、犯罪収益と知りながら金銭を受け取った罪で逮捕された。名古屋高等裁判所はホストに対し、懲役3年、執行猶予5年、罰金80万円の判決を言い渡した。

「被告人から謝罪の言葉も一切ない。せめて騙したお金だけは全額返して欲しい、それだけが唯一の望み」と被害者は語っている。逮捕から1年半が経った今も、彼の元に金は1円も戻ってきていないという。

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