フィリピン警察に密着 スラム街や刑務所に潜入・特殊詐欺グループの捜査についても聞く
「フィリピン警察24時」密着企画 第4弾。今回、密着許可が出たのはフィリピンの首都マニラの警察の中でも、最も犯罪件数が多いというマニラ北西部トンド地区の2つの警察署「モリオネス警察署」「ラシャバゴトンド警察署」だ。
この地区にはフィリピン最大のスラム街があり、かつてスモーキーマウンテンと呼ばれていた場所。以前、ゴミ捨て場だった場所でゴミの山から自然発火した煙がもくもくのぼることからその名がついたという。この地が閉鎖されると行き場を失った人々が近くに移住し、多くのスラムを形成していった。
仰天スタッフは早速、刑事と共にスラム街の中へ。スラム街の中は住民が勝手にどんどん家を建てるので複雑に入り組んでおり、狭い部屋で多くの人が暮らしている。
以前フィリピン警察を密着したとき、街は違法薬物の常習者であふれていたが今はどうなっているのかと刑事課のトップ・ダト部長に話を聞いた。
今マフィアはほとんどおらず、ドゥテルテ政権でかなり治安はよくなったという。
ダト刑事部長に現場の最前線で働く刑事を紹介してもらうと、短パンにサンダル姿の刑事が登場。他の刑事もサンダルに肌着の様なシャツにタトゥー、ピアスまでしていた。捜査する上で、スラム街でも違和感ない格好が不可欠だという。
そんなフィリピンに今はどんな犯罪が多いのか?マーク刑事は「違法に作った銃が多く出回っていて、週に1人は逮捕しているかな」という。
後日、そんなマーク刑事の元へ情報提供者から違法銃を持っている男がいると連絡が入った。5人の刑事が人だかりの中犯人を探し、犯人を確認したのか?マーク刑事が足早に動く。犯人の手には違法銃があり、すぐに刑事が銃を回収し犯人確保。あっという間の逮捕劇だった。
犯人が持っていたのは、フィリピンのスラム街で出回っている違法銃で手のひらほどの大きさだ。スラム街では、金儲けのため違法銃を製造し販売する者がいる。
逮捕された男は、違法銃を100ペソ、およそ270円で買ったという。
突如、マーク刑事が「今、情報提供者から連絡がきたので捕まえに行きます」と逮捕へ向かった。フィリピンの刑事には、少なくとも2~3人、スラム街の中で生活し情報を提供してくれるスパイがいる。スパイは刑事に情報を提供することで金がもらえ、情報の価値によって金額が変わるという。
マーク刑事が先回りしていた刑事と合流すると2人の男を逮捕。彼らがやっていたのはフィリピンでは違法のカラクルスといわれるギャンブルだった。
公然の場でやるのは違法のため、6年以下の刑期になる。今フィリピンでは、違法ギャンブルで負けたものが強盗や殺人などの犯罪を起こすことが多くなり、取り締まりを強化しているという。
続いて、内部の撮影を許可してくれた刑務所はマニラから北へ83キロ行った場所にあるパンパンガ州にあるパンパンガ刑務所だ。
所長のアレインさんは「今、囚人は1280人ぐらいかな、窃盗や強盗、殺人犯もいます」と話す。所長が刑務所内を案内してくれた時間は自由時間。サッカー場ほどの広さに1000人の囚人がおり、奥の中庭では、バスケットを楽しむ囚人やビリヤードを遊ぶ者もいた。
囚人たちの共有部分にはガスコンロがあり、この刑務所では自分たちで食事を作るという。基本、刑務所から支給されるのは米とメザシ1匹ぐらいだが、教会から立派な食材と調味料を買うことができる。包丁や調理器具も自由に貸し出しており、さらに刑務所内で囚人は商売して、金を稼いでもよいという。売るものは面会の時に持ってきてもらいそれで商売ができ、なんでも好きに商売しても良いという。
インスタント麺に卵つきでおよそ95円で売る者がいたり、捕まる前理髪店をやっていたという受刑者は散髪でお金を稼いでいたりといった具合だ。道具は刑務所が預かってくれ自由時間の時だけ使えるという。
なぜここまで囚人たちに自由を与えるのか?アレイン所長は「囚人同士のトラブルを防ぐにはストレスを与えないことが大事だと考えています」と話す。さらに脱走しようと思えばできそうな扉のあるエリアには模範囚がおり、模範囚になれば、所長のいるオフィスにも入ることができかなりの自由が許されるそう。トラブルを起こせば懲罰房へ。自由がなくなるので囚人同士のトラブルはほとんど起きないという。
夕方6時になると自由時間は終了。部屋に入った囚人たちはギュウギュウで部屋に戻る。午後11時に消灯。翌朝6時、部屋の鍵が開放され、囚人たちは外へ。朝は掃除から始まるがまだ寝ている人もいた。6時半、ミサの時間になると囚人たちの演奏でミサが始まると神父さんが登場し1時間半、ミサを行う。
そしてその後、週6で行われるという面会の時間へ。午前9時、面会がスタートすると男性囚人とその彼女が面会。すると多くの囚人がいる部屋に入り、さらに個室へと2人で入って行った。個室のあるものは2人きりの時間を過ごすことができ、周りに囚人がいても堂々と時間を過ごすという。
女性囚人の部屋にも個室はあるが、女性囚人は個室での面会は禁止で共有部分でしか会えないという。午後4時、7時間の面会時間は終了。すると、今度は中庭にステージが登場し、派手目の女性が登場。
これは週2回行われるズンバダンスのイベント。登場した派手目の女性たちはインストラクターで、囚人のストレス解消のため体を動かす大事なイベントだという。
今、世間を騒がせている闇バイト問題で特殊詐欺グループの指示役だった「ルフィ」らがいたのもフィリピンだ。
今回、「ルフィ」らが収容されていたビクタン収容所の撮影許可が出た。収容所があるのは、首都圏警察署と呼ばれる主要都市の捜査をカバーする警察署の中にある。広大な施設の一部に「ルフィ」らが出てきた場所があった。そして仰天スタッフは日本のメディアで初めて取材。
当時を知る広報官・ダナ主任によると「日本への強制送還の日はすごい人出で、空港までの道のりも渋滞にならないように綿密にルートを考え日本へ送りました」という。
今も刑務所には日本人がいるかと聞くと、14人いるという。さらに「ルフィ」を逮捕した外国人犯罪者を捜査する部署のチーフ代理・レンデル刑事がインタビューに応えてくれた。新たな日本人詐欺グループの情報はあるのかと聞くと「今も別の詐欺グループの捜査依頼が日本から来ています」という。レンデル刑事は日本の取材に答えるのは初めてだと話した。
一方警察署では、ある凶悪犯の逮捕に動いていた。現場はスラム街の危険地帯で強盗犯だという。犯人は3件の強盗をし現金1万ペソ、日本円でおよそ2万7000円を盗んだという。スタッフはロケ車で待機、刑事に小型カメラをつけてもらい撮影してもらった。
刑事が「逮捕だ」と家を訪ねると犯人の奥さんが激しく抵抗。が、5分後、犯人は容疑を認め従った。刑事は犯人を連れ、なぜかロケ車へ向かってくる。
そして「そこに乗れ」と犯人たちをロケ車へ乗せた。まるで自分たちの車かのように指示をする刑事に仰天スタッフも驚き。
フィリピン警察は、街の安全のため日々起こる様々な犯罪者と立ち向かっていた。