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20年間心にしまっていた真実

2020.06.30 公開

20年前、都内の高校に通う女子高生が痴漢の被害に遭っていた。
そんな時、そっと彼女を抱え込むようにして痴漢から守ってくれた男性がいた。

長身で若い男性…高校生くらいのようだったが、私服なので分からなかった。
それ以来、痴漢から守ってくれるようになったその男性を意識するようになった女子高生。

そんな2人を引き裂く事故が起きてしまう。

2000年3月8日午前9時1分…営団地下鉄日比谷線脱線事故。
中目黒駅に入ってきた列車の1番後ろの車両がカーブで脱線。対向車両に激突した。
この事故で5人の命が奪われ、64人が重軽傷を負った。

女子高生を痴漢から守り続けた彼の名は富久信介。1982年7月、横浜生まれ。
父・邦彦、母・節子の長男として誕生。生まれながらにしてしっかりとした顔立ちで手のかからない子だった。

父・邦彦は子どもとの時間を作りたいと自宅で翻訳の仕事をするように。
富久家のモットーは文武両道。その期待に信介は見事応えた。

勉強も積極的で、小学3年生の時には自ら塾に通いたいと親に主張。
進学塾では、常に1番上のクラス
そして、何より仲間思いの子だった。

そんな信介は小学5年生頃から親との距離をとるようになった。
学校のことは何も喋らなくなり、学校行事に親が来ることをとにかく嫌がった。

そして、中学受験は全国屈指の進学校「麻布中学」に合格。
学校へは東横線から地下鉄日比谷線に乗り、広尾駅までおよそ1時間の通学。

中高一貫の男子校である麻布中学は校則もなければは、制服もない。
信介は中学に入ると勉強よりもスポーツに燃えた。

ボクシングにのめりこむ毎日

父はそんな信介に格闘技を勧めた。
その言葉が刺さったのか、信介はボクシングに興味を持った。

1度火がつけば、持ち前の頭脳で徹底的に考え、ボクシングジムも自分で探し入会した。
負けず嫌いの性格。やるからには誰にも負けたくなかった。

そして高校生になった信介は、新たなボクシングジムに通うことに。
そこは、元世界チャンピオン大橋秀行が会長を務めるジムだった。

高校時代は、アマチュアで東京都代表になってインターハイに出ることを目標にした信介。
しかし、インターハイは高校でボクシング部に所属していないと出場はできない。

どうしてもインターハイに出たい信介は、学校に直談判しボクシング部を設立した。

高校1年の夏、初めての試合は見事勝利。
その後は、怪我もあって五勝五敗の成績。

ボクシングに情熱を燃やした高校生活。
そんな時だった…満員電車で痴漢に怯えている女子高生に気づいたのは。
信介は彼女に何も言わず、ただ黙って痴漢を撃退した。

両親には想像する事もできなかったが、彼女をそっと助けていた信介。
彼女は信介に好意を抱くが、声をかけることはできなかった。
互いの名前も学校もわからないまま電車の幸せな時間。

しかし悲劇が起きてしまう。

未来ある若者を突然襲った悲劇

2000年3月8日。
事故当日この日、信介は期末試験の最終日だったため、いつもより遅く登校した。
何気ない一日のはずだった。
しかし、運命は非情だった。

信介は中目黒で日比谷線に乗り換えた。
そして駅を出発した直後、反対側から駅に入ってくる列車の最後の車両が脱線。
信介が乗っていた車両に側面衝突をした。

そして昼過ぎ、父に目黒警察署から連絡が。
次に聞く言葉は生涯忘れない言葉となる。

警察「息子さんが中目黒駅付近で起きた日比谷線脱線事故で犠牲になりまして亡くなられました」

身元確認が行われた。
両親の前にいたのは、変わり果てた姿の信介だった。

この事故で5人が亡くなった…信介もその1人だった。
信介の葬儀では誰よりもパワフルにまっすぐ生きた彼の死に、多くの人が涙した。

そして、電車で会っていた彼女は…ニュースで彼の死を知った。
うそであってほしい…確認したくても、連絡先も何も分からない。
ただただ別人であることだけを願って、電車に乗るたび彼を探した。

時には、時間をずらしたり、車両を変えたり、何日も彼を探した。
しかし、彼はいなかった。

その後、ニュースで彼は麻布校生でボクシングをしていたことを知った。
大橋ジムであることも分かった。
そして思いを伝えたくて手紙を出した。

しかしタイミング悪く、大橋ジムの移転と重なり戻ってきてしまった。
そして、信介との時間は誰も知らない彼女だけの思い出になる。

20年後に伝えられたメッセージとは

それから20年…大橋ジムはボクシング界のスーパースター井上尚弥選手が脚光を浴びていた。
そんな大橋会長に今年4月、SNSで突然あるメッセージが届いた。

信介の両親に伝えてほしいという内容のメッセージ。
大橋会長はこのメッセージをすぐに信介の両親に転送した。

そのメッセージの内容とは・・

「なんとなく、富久くんのことを思い出し、辿り着きました。
遺族の方にお伝えしていただけるなら、お願いしたいのですが。
ほぼ毎朝、彼と同じ車両にいた、当時の女子高生です。」

さらに、信介との出会いについても語った。

「私と同じドアから乗るようで、いつもカッコいいなと思っていました。
何度か痴漢されるのを彼が守ってくれました。
話したこともないけど優しさを向けてくださった方でした、本当に感謝してます。」

「報道される写真を見て腰を抜かし事故の後、間違いであってほしいと、いつまでも車内で探しました。
どうしても会えなくて…現実を受け入れるまで、たくさん泣きました。
私のような、友達でもなんでもない、ただ同じ電車でよく会うだけの存在だったものにも優しかった富久くん…本当にありがとうございました。」

両親はこのメッセージに涙した。
家ではいつも無愛想だった息子…でも人を愛することを知って旅立った。
そう思え、嬉しくて涙が止まらなかった。

信介との別れから20年、自分を守ってくれた感謝を伝えられずにいた彼女。
なぜかわからないが、今年、急に信介の顔が頭をよぎったという。

その後、両親と彼女はメールで連絡を取り合い彼女の当時の思いを聞くことができた。

学校帰りの空いている車内でも彼を時々見かけたというが、かっこよくて背が高く、男らしい様子に、絶対に付き合っている相手がいると思って、考えないようにしたという。
いつも守ってくれる信介に甘え、満員電車のこの時だけ、恋人気分でいた。

信介が亡くなった後は事故現場を通る時は目を開けることができなかった。

「5歳の息子にも、彼の話はしていて…
 本物のヒーローは日常にいる、と伝えています。真の意味でも、かっこいい男になりなさいと。本物はもちろん、富久くんです」

このメッセージに両親は、
「お優しい心遣いに何度も読み返し、うれしくて少し悲しくて、
読むたびに涙が止まりません」
と伝えたという。

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