手が震える空腹の謎
ストレスが溜まりやすい今、ある病が若い人に増えているという。
バレーボール日本代表でソウルオリンピックに出場した杉山明美。
当時32歳だった彼女は競技を引退し、セカンドキャリアとしてオフィスワークを始めていた。
スポーツ万能で体力にも自信がある…そんな彼女を謎の症状が襲った。
慣れないオフィスワークでストレスが溜まっていた彼女。
そんな彼女のやめられない癒しの時間…それが甘いお菓子タイム!
日々のストレスも発散でき、疲れも取れて最高だった。
そんな生活を続けていた彼女に異変が。
ある日の帰宅途中…突然立っていられないほどの強い疲労感に襲われたのだ!
それと同時にこらえられないほどの空腹感!
とにかく何かを口にしたかった。
すぐにパンを買ってほおばると…なぜか先ほどまでの異様な疲労感が治まった。
おなかがすいていてエネルギー不足だったのか?
そう思った明美は、それからは昼食をしっかりと取り、小腹がすいた時には常に甘いおやつで空腹を満たした。
スポーツ選手だった彼女は元々よく食べる方ではあった。
だから、「食事が足りなかったんだろう」と思っていた。
だが、この頃から耐え切れないほどの眠気に襲われることが増え、仕事が手につかなくなることも。
さらに、夕方になると会話が全然頭に入らず、異常な疲れも襲った。
これまでも真面目に仕事に取り組んでいた彼女。
疲れを残さないようにしっかり寝て、体調を整え、食事も一気に済ませて仕事に集中する!
だが、いくら気を付けていても何度も同じ症状が彼女を襲った。
そして、異常な疲労感と抑えられない空腹感は日に日に強くなっていく。
昼食後、それほど経っているわけでもない。
それにもかかわらず、丸1日何も食べていないかのような空腹感。
食べたいと感じたら我慢が出来ず、一気にドカ食いしないと気が済まなくなった。
ドカ食いをすると、さっきまでの倦怠感はすっかり治まる。
「きっと自分はこういう体質なんだ。」…勝手にそう思っていた。
しかし異変を感じて数か月…朝、体は重く起きるのが異常に辛くなった。
そして、空腹を満たせないと、立っていられないほどの強い倦怠感に襲われた。
次第に感情のコントロールもうまくいかないようになっていた。
ドカ食い生活で恐ろしい症状に
彼女の身に起きていたこと…それは「機能性低血糖症」というものだった。
低血糖とは、体内の血糖値が下がりすぎてしまった状態のこと。
糖尿病の治療をしている人などが血糖値を下げる薬を使用した際、逆に下げすぎてしまうことで見られる症状。
だが、彼女は糖尿病でもなければ、その治療をしているわけでもない。
そもそも血糖値は、炭水化物などの糖分を多く含む食事をとると一時的に上昇する。
その際、膵臓からインスリンというホルモンが分泌され血糖値を下げ安定させている。
だが、日ごろ炭水化物や糖分を取りすぎたり、ドカ食いをすると血糖値が急上昇。
すると今度は血糖値を下げようと膵臓は慌ててインスリンを大量に分泌。
それを繰り返すうち、センサーに異常が生じインスリンを過剰に分泌するようになり、低血糖の状態になってしまうのだ。
そして体が低血糖状態になると、脳が異常な空腹感を覚えそれを補うため、さらにドカ食い。
これを繰り返すことで症状は悪化していくという恐ろしい病。
つまり彼女が機能性低血糖症になったのは日頃の糖質の取りすぎとドカ食いが原因だったのだ!
明美の症状は気が付かないうちに悪化。
その結果、なんと彼女は寝たきりの状態になってしまった。
そして病院で初めて、自分が「重度の低血糖症」だという事を知る。
こうして明美は治療を開始した。
まず取り組んだのは食事の改善。
低血糖症の治療はインスリンが出にくい食事を取り、血糖値のアップダウンを防ぐことが重要となる。
肉、魚、卵、大豆製品などのタンパク質と脂質、さらに野菜、海藻、キノコなどを中心に食べていくと血糖値のアップダウンが少なくなる。
さらに食べる順番も重要。炭水化物を後から食べるだけでも血糖値の急な上昇を抑えることができるという。
こうして明美は食事の改善により少しずつではあるが症状は改善していった。
実は現在、コロナ禍で家にいる時間が長くなったことで、カップ麺などの出来合いの食事で炭水化物に偏りがちになり、それがいずれ機能性低血糖を招いてしまう若い人たちも増えているという。
では、食べることで血糖値がどう変化するのか?
健康な20代の仰天スタッフで調べてみた。
食事前の血糖値は「82」。
カレーを先に食べ、そのあとにサラダを食べた。しばらくして血糖値は「180」まで上昇!
次はサラダを先に食べ、そのあとにカレーを食べると…血糖値はなんと「135」までしか上がらなかった!
そして食べる速さでも普段通りに食べた場合と、倍の時間でよく噛み、ゆっくり食べた場合でも、大きな差が表れた!
「食べ方」が、血糖値に大きな影響を与えていたのだ!
野菜から食べて、ゆっくり食べれば血糖値は上がりにくい。
そうすれば、機能性低血糖症にもなりにくいしダイエットにもいいらしい!