ライト・オブ・ダービーは生地のダービーで生涯のほとんどを過ごしたのでこう呼ばれる。この時代(18世紀)にロンドンを活動の拠点としないで、国際的な名声を博したイギリスのほとんど唯一の画家である。彼を有名にしているのは数々の夜景である。夜景を得意とした画家は17世紀のジョルジュ・ド・ラ・トゥールを始め、何人かいるが、ライト・オブ・ダービーの場合、その光源はローソク、ランプ、月の光、時には爆発する火山、あるいは花火など、極めて変化に富んでいる。もうひとつ、彼が他の追随を許さないのは有名な《空気ポンプの実験》や、産業革命時代の昼夜兼行の工場など、「絵になりにくい」モチーフを取り上げていることである。
この絵の舞台は廃墟のような建物の中の鍛冶屋であるが、鋳造に使う器械類は実物をもとに正確に再現されている。屋内や人物に見られる明暗のドラマに対し、外では月光が詩的な効果を挙げ、その光を映した川はこの仕事場に必要な水力を供給している。これと似た、室内だけを描いた絵もあるが、この絵では画家は建物の壁を取り払い、人工的な光に照らされた屋内と、自然の光に照らされた屋外をともに見せるという「サービス精神」を発揮している。
作品解説 千足伸行