翌日。評議室の中、裁判長と裁判官2人。
いよいよ裁判の最終日。
**判決は全員一致が理想だが**
   決まらない場合は多数決が行われる**

 裁判長 「さあ、いよいよこれが最後の評議です。
       ここで被告人への罪状と刑を決めなくてはなりません。」

 澤山 「オレは、殺意ありに変わりない!」
次々に手を挙げる5人の裁判員たち。
寺本、周りの様子をうかがうが、手を挙げない。
 澤山 「よし!じゃあ、多数決で殺人未遂罪だな。」
 寺本 「みなさん、ちょっと待ってください。
     あのボク、どうしても気になってることがあって」

 寺本 「事件現場の写真をもう一度見せてもらえますか?」
裁判官、事件現場の写真を裁判員全員に見せる。
 寺本 「事件現場に落ちていたこのユリの花…
     みなさん、手元の資料を見てもらえますか。」
手元の資料に目をやる一同。

 寺本 「被告人は、3年前に娘さんを亡くされてますよね?
     その子の名前が百合(ゆり)さんなんです・・・
     彼女はあのユリの花を、娘さんだと思って
     育てていたんじゃないでしょうか・・・」
 寺本 「その大切なユリが無残にも叩きつけられた。
     だから、彼女は思わずハサミを手にしてしまったんだと
     思うんです!。」

 澤山 「わかった、
     君の言ってることが仮に正しいとしよう。
     だとすると、被告人は夫を奪われた上に、
     娘だと思って育てていた花を踏みにじられたわけだから、
     余計、殺意があったと考えられるんじゃないのか?」

 寺本 「人には、言葉で説明できない様々な感情があります。
     だからこそ、考えの違う人が沢山集まって、
     色んな立場で色んな気持ちをくみ取れるように
     裁判員制度ができたと思うんですよ。
     皆さん、もう一度だけ、考えてみて下さい」