赤像式クラテル:ガニュメデス
  「最も美しい少年」と称されたトロイアの王子ガニュメデスは、ゼウスの放った(あるいはゼウスの化身の)鷲によって天界に運ばれて、美童として神々の酌を務めることになる。ここでは、まだ地上にいるガニュメデスが裸体で無心に輪遊びをしている姿が描かれているが、手に持つ鶏には恋の贈り物の意味があり、この裏面にはゼウスが描かれているから、神と少年のドラマはすでに始まっている。高さも直径も33cmという独特な形のクラテル(ワインと水を混ぜる容器)にこれを描いた作者は、その代表作の所在地から「ベルリンの画家」と呼ばれ、前5世紀前半を代表する赤像式の画家。雷門などの水平帯上に、枠組みなどを取らずに、必要最小限の繊細な描線で、曲面に人物を的確に描き出す技量はすばらしい。
前の作品
閉じる
次の作品