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料理が語るイカの生態
#608 (2001/11/25)
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日本人はイカが大好き!なんと魚介類の消費量でも、エビやマグロなどを押さえ、堂々のNo.1をキープしています。そこで今回の目がテン!は、イカの様々な食べ方から、知られざるイカの生態に迫ってしまいます。
イカリングはなぜ横切りなのでしょう?確かに縦に切ってはリングにはなりません。しかし縦切りでは食べたことがないですね。そこで矢野さんは、イカを縦切りにして、揚げて食べてみました。すると、横切りのものに比べててんで歯ごたえが無いのです。なぜなのでしょう?電子顕微鏡でイカの筋繊維を見てみました。するとイカの筋繊維は横向きに並んでいました。実はここにイカの呼吸と泳ぎに関わる理由があったのです。
イカは身体を膨張させ、水を吸い込みます。そして吸い込んだ水を漏斗(ろうと)という口のような部分から吐き出します。この時の水を吐き出す力を利用して泳いでいるのです。いわばイカの泳ぎはジェット噴射。吸い込んだ水を効率よくしぼり出すために、筋繊維は横向きになっていたのです。つまりイカリングは横向きに並んだ筋繊維を切るようにしてかむことになるので、歯ごたえを感じるんですね。
イカの刺身は真っ白。煮物の表面が赤い色をしているのと対照的です。そこで生のイカの赤っぽい表面の皮をはいでみました。すると現れた白い身。刺身と見た目は変りませんが、矢野さんが試食してみるとなかなかかみ切ることが出来ず、何やら糸状のものが伸びる、伸びる…。実は刺身にするにはもう1枚薄皮をむかなくてはならなかったのです。伸びたものはこの薄皮でした。この薄皮の正体は縦に並んだコラーゲン繊維で、生のままだとよく伸びるんです。しかしこの薄皮は加熱すると縮んでしまう性質があります。なので炒め物など薄皮がついたまま加熱する料理の時は、イカの表面に飾り包丁と言われる切り込みをいれるなどの工夫をしているのです。
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イカは横に並んだ筋繊維と縦に並んだ薄皮のコラーゲン繊維で骨の無い体を支えていた!
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イカには腕が10本あります。しかしよく見るとその中に、他の腕よりも長いものが2本あります。この2本は触腕といい、エサをとる時に伸ばして使います。この中心にエサを食べる口があります。それが通称カラストンビ。カラスとトンビのくちばしを合わせたような様子からつけられたこの名前。この口でエサをかみ砕いて食べているのです。
さらにイカの吸盤にも驚くべき秘密がありました。イカの水槽にルアー(疑似餌)を入れてみたところ見向きもしなかったのに、ルアーにイカの好物のエビの味をつけてみたところ、ルアーを捕まえ離そうとしないのです。なぜでしょう?実はイカの吸盤には舌の役割もあるというのです!。なんと触るだけで、えさかそうでないかがわかってしまうというすぐれものの感覚器!イカの腕にはエサを捕まえる知恵がつまっているんですね。
イカは危険を感じると漏斗から墨を吐いて逃げます。吐いた墨をよく見ると…イカの形そっくりです。イカの墨はイカの分身だったのです。さらにこの墨が漏斗から吐かれることでイカは素早く逃げることができるのです。
このイカ墨をスズメダイの群れに放つと、最初は驚いて逃げていた魚たちが、おやおや、しばらくすると近づいて墨を食べ始めているではありませんか。
実はこのイカ墨、成分を調べると、黒色のもとであるメラニン色素のほかに、うまみ成分となるアミノ酸が含まれていたんですね。なので、私たちにとっても魚が食べても美味しいものだったのですね。魚が墨を食べる内にイカはまんまと逃げうせるのではないかと言われています。
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