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 草もちにはなぜヨモギ  #630 (2002/05/05) 

 5月5日は、こどもの日、端午の節句。実はかつて、この日に病魔をはらうため、家の軒先にヨモギを吊るす慣習が有ったというのです。ヨモギといえば、草もちですね。しかしなぜ他の草ではなく、ヨモギなのでしょう?そしてヨモギというこの草、草もち以外にも様々な使い道があったの、ご存知でしたか?意外に身近に生えていて結構役立つ草ヨモギを今回は科学します。

変わり草もち3種  “ヨモギ以外の草で、草もちを作っちゃえ!”と矢野さんは東京。向島にある老舗の和菓子屋さんを訪ねました。そしてなんとセリ、ホウレンソウ、シソで草もち作りに挑戦しました。結果、ホウレンソウはきれいに混ざったけれど水分が多くベタベタ。セリとシソは葉がまだらに残り完全には混ざりません。

 そして矢野さんは“おじいちゃん&おばあちゃんの原宿”東京巣鴨の地蔵通り商店街に行き、ご通行中の皆さんにヨモギも加わった4種類の草もちを試食して戴きました。結果、ホウレンソウとセリは不評、シソはまずまずの好評でしたが、やはりヨモギがダントツの人気でした。

葉の裏の綿毛  いったいなぜヨモギは草もちに使われるのでしょう?その秘密は意外なところにありました。ヨモギの葉の裏を見ると、びっしりと白い細かい毛が生えているのです。そしてこの毛、拡大して見ると、なんとT字型の毛(T字毛)だったのです。このT字毛が複雑に絡み合うので、もちともよく混ざり、草もちのコシが出るというわけなのです。

 もともとヨモギの原産地は中央アジアの乾燥地帯。なのでヨモギは、葉の裏の気孔から水分が抜けない様に、この毛でふさいでいたのです。

所さんのポイント
ヨモギの葉の裏のT字毛が、草もちのコシを作っていた!

 そしてこの毛が生んだもうひとつ大きなものが有りました。それがお灸。なんとお灸のモグサは、ヨモギのT字毛だったのです!あのなかなか燃えきらないその燃え方にも、ヨモギの毛の性質が大きく関わっていました。ヨモギの毛の成分を分析すると、なんとロウが検出されたのです。ロウは気化しないと燃えません。なのでロウソクの芯もなかなか燃えないのです。ヨモギの毛も同じこと。ロウに包まれているのでなかなか燃え尽きないのです。

所さんのポイント
お灸のモグサは、ヨモギのことだった!

 さらに番組ではもう1つ大きな情報を入手。なんと戦国時代、ヨモギから作った火薬が火縄銃に使われていた!というのです。ならばヨモギ火薬を再現してみよう!矢野さんはかつて火薬の作られていた富山県に飛びました。するとやにわに民家の縁の下に案内された矢野さん、そこにはヨモギを土の中に入れてしばらく経った土がありました。その土を煮詰めて作った塩硝(えんしょう)という硝石の一種を囲炉裏に投げ込んでみると…確かに火花を上げたのです!この塩硝とイオウと炭をうまく調合すれば、火薬が出来るのです。
 しかしこの塩硝を自然に作るには4年以上かかります。そこで矢野さんは1週間で作るインスタントヨモギ火薬に挑戦。ヨモギの葉を高温発酵させてみると、1週間で硝石らしきものが顕微鏡で確認出来ました。火薬会社の方に協力して頂き、これにイオウと炭を調合。ヨモギ火薬が完成しました。
 しかし火をつけましたが、勢いはほとんど有りませんでした。十分な発酵をせず、また生成をきちんとしないと、火薬までは程遠いようです。

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