太らない!?人気の
焼酎
第730回 2004年5月2日
この3月、驚くべきニュースが飛び込んできました。なんと
出荷量で焼酎が日本酒を上回ってしまった
というのです。その
安さと、二日酔いしない、太らない
、といったイメージから、今人気急上昇中。しかし焼酎はなぜこんなに安く、またいいお酒とされているのでしょう?それにはちゃんと科学的な理由があったのです。
焼酎はどのように造られるのでしょう?焼酎に目が無いという佐藤アナが、本場鹿児島の工場を訪れ、焼酎の代表格、麦焼酎の造り方を見ました。すると驚いたことに
最初に登場したのはお米
。日本酒の材料ではないですか。
実は
途中まで焼酎と日本酒の造り方は同じ
なのです。まず蒸したお米に、カビの一種、麹菌を加えます。コメにはデンプンが豊富にあり、麹菌はこのデンプンをブドウ糖に変える働きがあります。そしてここに酵母を加えると、酵母はこのブドウ糖を栄養に増えます。ここまでは焼酎と日本酒はほとんど同じなのです。
そして日本酒ではここでまたコメを加えるのですが、焼酎ではここで、名前についている原料(麦、イモ、ソバなど)を加えます。するとこの原料のデンプンを麹菌がブドウ糖に分解し、そのブドウ糖を酵母がアルコールに分解するのです。
麹菌と酵母の共同作業で、デンプンがアルコールに生まれ変わる
のです。
これをこしたものがもろみで、10日ほどおくと日本酒は完成。ならば焼酎もと思って飲んでみたのですが、酸っぱくて飲めた代物ではありませんでした。この後
焼酎には蒸留という作業が必要
なのです。もろみを熱し、蒸発してきた気体を水で冷やす作業。こうすることで、
純度と濃度の高いアルコールが採れる
のです。こうして出来たお酒を
蒸留酒
と呼びます。
ウイスキー、ブランデー、ウオッカがこの仲間
。大して蒸留しないお酒のことを
醸造酒
と呼び、
ビール、ワインがこの仲間
なのです。
焼酎も含まれる蒸留酒は、アルコールの純度と濃度が高いのが特徴。
色をつけない限り、もともとは無色透明なのも特徴。
日本酒と焼酎には、もう一つ大きな違いがありました。それは
麹菌
。
日本酒
の麹菌が
黄麹菌
であるのに対し、
焼酎
の麹菌は
黒麹菌
。
前者は高温に弱く雑菌の繁殖を許してしまう
のに対し、
後者は高温に強く雑菌の繁殖を防ぎます
。これは
黒麹菌がクエン酸を持っていて雑菌の繁殖を防いでいるため
なのです。高温に強いので、焼酎は暖かい地域でも普及したのです。そして日本酒のように細かい温度調節も不要。これが焼酎の安さの秘密の一つだったのです。
本当に
焼酎は残らなく、二日酔いしにくいのでしょうか?
そこで佐藤アナが自ら実験台となって、2晩連続で、同じアルコール度数で同量の日本酒と焼酎を1晩ずつ飲み、翌朝の残り具合を比較してみました。すると確かに焼酎の方がすっきりしているというのです。
そこで今度は大学生3人に空腹の状態で同じアルコール度数15度の日本酒と焼酎を1日ずつ同量300cc飲んでもらい、その血中のアセトアルデヒド量を測定しました。アセトアルデヒドとは、アルコールのエタノールが分解されて出来る物質で、悪酔いの原因となるもの。測定の結果、
焼酎は日本酒の半分だった
のです。
これは、蒸留の結果、
焼酎のアルコールがほぼアセトアルデヒド100%になるので効率よく肝臓で分解される
のに対し、
日本酒は他の種類のアルコールも含んでいるので、違う種類のアルデヒドも出来てしまい、肝臓がこちらも処理しなくてはならなくなるため、アセトアルデヒドの分解が遅くなってしまう
からなのです。
そして蒸留は、太りにくいことの理由でもありました。これは
糖分などは蒸留されずにもろみのほうに残るため
なのです。この結果、蒸留酒は醸造酒に比べ、カロリーが少ないのです。
焼酎が二日酔いしにくく、またカロリーが低めなのは、いずれも蒸留のお陰だった!