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驚き イモリヤモリ の謎
第776回 2005年4月10日


 開催中の愛・地球博(愛知万博)のイギリス館の天井に、なんとヤモリのシルエットが登場しました。実は、ヤモリが最先端科学に貢献しているというのです。さらに、ヤモリだけならず、イモリも人類の未来を変えるかもしれないほど大きな役割を果たしているというのです。

イモリ・ヤモリ  まずイモリとヤモリの違いですが、お腹が鮮やかな赤色をしている方がイモリで、全体に黄色っぽい色をしている方がヤモリです。実は、イモリはフグと同じ成分の毒を持っていて、お腹の赤色は他の生物に毒を持っている事を知らせるための警戒色なのです。
 また生息場所は、イモリはカエルと同じ両生類で主に水中に棲んでいます。井戸で害虫を食べてくれることから「井戸を守る」でイモリという名前がついたのです。一方、ヤモリはヘビと同じハ虫類で陸上で生活しています。家の蚊や蛾を食べてくれるので「家を守る」でヤモリなのです。

 愛・地球博のイギリス館にヤモリが登場したのは、イギリスのある企業がヤモリのように壁や天井を自由に移動出来る「ヤモリテープ」なる物を開発中だからなのです。もしこれが完成すれば、重力の少ない宇宙空間でもロープで固定せずに自由に歩き回ることができると期待されています。  壁や天井を自由に移動できるヤモリ。その足にはさぞかしすごい吸盤がついているのかと思えば、なんと足の裏に吸盤はついておらず、代わりにシマシマ模様になっていました。実は、このシマシマ模様は細い毛がびっしりと生えているもので、その数1平方センチメートルに数億本。さらに、その毛の先端は枝分かれしており、ヤモリは無数の毛で壁や天井に接触していたのです。
 なぜ、これで壁や天井を自由に移動できるのでしょう?実はヤモリの足の毛は非常に細かく壁との接点が多くなるので、毛を構成している分子と壁を構成している分子が互いに引き合う、分子間力という現象が働くのです。ちなみにガラスとガラスを合わせると張り付いてしまう現象にも分子間力が働いています
 「ヤモリテープ」もこの分子間力を応用しようとしていて、吸盤だと空気がないと使えませんが、分子間力を使えば空気がない宇宙でも使えると、大いに期待されているのです。

所さんのポイント
ポイント1
ヤモリは吸盤ではなく分子間力で壁や天井に張り付いていた!
この原理は、空気が無い宇宙での活動に応用が期待されている。


 しかし宇宙といえば、なんとイモリの方が一足お先に宇宙に飛んでいるのです。1994年に飛び立ったスペースシャトル・コロンビア号には、「せきつい動物は無重力でも受精し、卵が細胞分裂するか?」ということを調べるため、イモリが乗せられていました。でも、なぜイモリが選ばれたのでしょう。

宇宙飛行士とイモリ  実は、そこにはイモリの不思議な受精が関係していました。イモリのオスには交接器がなく、直接交尾ができません。その代わりに、イモリのオスは精子の入った袋を落として、それをメスが総排出腔という部分から体内に取り入れるのです。そしてメスは、その精子が入った袋を体内で保管し、水温が25℃以上になったときに、その精子と自分の卵を受精させるのです。オスの精子は最大5ヶ月間、メスの体内で保管されることが出来ます。
 つまり、宇宙にいる限られた時間の中で動物のオスとメスを交尾させるのは難しいので、メスの体内で精子を保管し水温を調節すれば受精が行われるイモリが宇宙に行くことになったのです。
 結果は、見事受精が行われ、産卵や細胞分裂も観察されました。つまり、同じせきつい動物であるヒトも宇宙で正常に受精する可能性が導き出されたのです。

 驚いたことに、イモリは体のあらゆる部分を失っても再生出来るというのです。ヤモリは敵に襲われそうになると、トカゲと同様尾を切って逃げ、1年後には元通り尾が生えてきます。しかし骨までは再生出来ません。ところがイモリは手や足、目、心臓など、あらゆる所を再生する能力があり、さらに骨まで再生出来るというのです。イモリは足を切断されると、切られた断面の細胞が再生芽という特別な細胞に変化します。そして、その再生芽に「足になれ」という指令を与えると、およそ半年で、再び骨も含めて足が再生されるのです。
 実は現在、ヒトでも「再生芽に変化する細胞」「再生芽に指令を出す物質」は判明しています。あとは「再生芽に変化させる物質」が判明すれば、将来ヒトでもイモリと同じように再生が可能になり、臓器移植が不要になるかもしれないと期待されているのです。

所さんのポイント
ポイント2
イモリは尾だけでなく、あらゆる場所を再生する能力を持っていた!
これがヒトでも可能になると臓器移植が要らなくなる!





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