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食べて健康!?旬 ワカメ
第777回 2005年4月17日


 日本人にとって食べる海藻の代表格と言ってもいいワカメ。実は春から夏にかけてが収穫期なのです。そこで今回は、私達にも非常に身近で健康にも良いと言われているワカメに迫りました。

 ワカメとコンブはよく似ていますよね。それもそのはず、ワカメは褐藻綱コンブ目チガイソ科、コンブは褐藻綱コンブ目コンブ科ワカメとコンブは仲間なのです。しかし市場に行ってみると、コンブはお安いものから高級品まで価格がまちまちなのに、ワカメはほとんどが低価格。なぜなのでしょう?
海中のワカメ  そこで家族そろってワカメ好きな矢野さんが、最高級のワカメを求めて名産地・三陸を訪ねました。すると現在、私達の口に入るワカメの9割が養殖で育てられているとのこと。そこで沖合いのワカメ養殖場に行って見ると、なんと養殖されているワカメは、海中に張られたロープから下に向かって逆立ちの状態で生えていたのです。

 そもそも海藻には茎や葉の区別がなく、根のように見える仮根という部分で岩にしがみついています。そして海藻は海水中から養分を取り込んでいるので、陸上の植物のように太陽の方向に育つ必要はなく、どんな向きでも成長できるのです。
 しかし、この養殖ワカメには1年以上育てられたものは無いというのです。実はワカメは1年たてば枯れてしまう一年生の海藻。ワカメの養殖は短期間で、収穫されたワカメも、工場で機械を使って加工されるため、ワカメは比較的手頃な値段で買うことが出来るのです。一方、コンブは育てるのに最低2年はかかり出荷までに手作業の工程もあるので、質の良いものは高級品になってしまうのです。

所さんのポイント
ポイント1
ワカメは1年で枯れてしまう海藻。
加工にも手がかからないので、手頃な値段で買うことができるのだ!


 なぜ、日本人は好んでワカメを食べるのでしょう?実はワカメには、うまみ成分であるグルタミン酸はコンブの10分の1しかなく、なんとご飯と比べても少ないのです。そこで街の人に伺ってみると、皆さんワカメの食感を好んでいることがわかりました。
 顕微鏡写真  その食感の理由を調べるために、ワカメとコンブの断面を電子顕微鏡で見てみると、ワカメの断面にはコンブに比べて多くのすき間が見えました。実は、このすき間に食感の秘密が隠されていたのです。
 このすき間に埋まっているのはアルギン酸という成分。アルギン酸は、食べても消化吸収されずに排出される物質、食物繊維です。5gの乾燥ワカメから1.35gのアルギン酸が抽出されたのに比べて、同量のコンブからは0.85gしか取れませんでした。みんなが好きなワカメの食感は、アルギン酸という食物繊維によるものだったのです。
 しかし、なぜワカメにはアルギン酸が多いのでしょう?実は、アルギン酸には水を蓄えるという性質があります。天然のワカメは水深2mから5mのあたりに生息していて、海が干潮になったときに干上ってしまう可能性があるのです。そこで、太陽にさらされても乾いてしまわないようにアルギン酸をたくさん持ち、水分を蓄える必要があるのです。一方、コンブは干上がる心配のない水深7m〜10mに生息しているのでアルギン酸は少なくてすむのです。

 ワカメといえば、味噌汁の具としてよく使われていますよね。しかし、これには何か理由があるのでしょうか?
 そこで同じ分量の味噌で味噌汁を2つ作り、片方の鍋にはワカメを入れ、もう片方の鍋には何も入れないで、汁だけを街行く人に飲み比べしてもらいました。すると20人中19人の人が、ワカメを入れなかった味噌汁の方が塩辛いと感じたのです。
 そこで塩分濃度を調べてみると、ワカメ無しの味噌汁は0.8%、ワカメ入りの味噌汁は0.6%と、実際に塩分が減っていました。一体なぜなのでしょう?
 実は先ほど紹介したワカメのアルギン酸が、塩分を吸着しているのです。アルギン酸は、塩分中のナトリウムイオンと結合して、アルギン酸ナトリウムになります。さらに、その塩分を吸着したアルギン酸は、人間の持つ消化酵素では消化されずに、そのまま体の外に排出されるのです。つまり、味噌汁のワカメには減塩効果があったのです。

所さんのポイント
ポイント2
アルギン酸により塩分が吸着され、排出されるため、みそ汁にワカメを入れると、減塩効果が有った!




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