紅色の花!?
ベニバナ
第794回 2005年8月14日
お中元によく頂く油と言えば
ベニバナ油
。
ベニバナというからには、赤い花?
と思いきや、ベニバナ油のパッケージをよく見てみると、そこに描かれている花は
赤色ではなく黄色
ですよね。どういうことなのでしょう。そこで今回は、矢野左衛門が
ベニバナの秘密に
迫りました。
ベニバナのことを詳しく調べるため、矢野左衛門は
ベニバナの産地、山形県最上地方
へ向かいました。そこで見たのは、ベニバナ油のパッケージで見たのと同じ、一面に広がる黄色いベニバナの花。ベニバナは
キク科ベニバナ属
で、同じキク科の
アザミと花の形がそっくり
なのです。しかし、よく見てみると、
黄色い花に混じって、所々に赤い花が咲いています
。これは一体どういうことでしょう。
そこでこんな実験。赤色と黄色のベニバナを2種類用意し、そこにベニバナの花粉を運ぶというマルハナバチを放してみました。すると、
マルハナバチは黄色いベニバナにだけ群がって、赤いベニバナには全く寄りつかなかった
のです。
実はベニバナは、元々
黄色い花なのですが、受粉が完了すると赤く染まってしまいます
。つまりマルハナバチは、
受粉が終わってもう蜜のない赤いベニバナには寄って来ず、受粉の済んでいない蜜が残っている黄色いベニバナに寄ってきた
というわけなのです。
そもそも、ベニバナの原産地は中東からアフリカにかけての乾燥地帯で、花粉を媒介してくれる虫が非常に少ない地域。そのため、
少ないチャンスで効率良く虫に花粉を運んでもらうため、花の色を変えて見分けられるようにしている
と考えられています。
ベニバナの花は元々黄色いが、受粉すると赤く変化する。これは虫に受粉前で蜜があることを教え、受粉してもらうための生き残り戦略なのだ!
山形県河北町では、ベニバナの花びらを収穫して
「紅餅」
というものを作ります。しかし、この
紅餅、食べられる餅ではない
のです。実は、紅餅とは
染め物に使う原料で、ベニバナの花びらを乾燥させて平べったくしたもの
。古くからベニバナから採れる鮮やかな赤色は、染料として珍重されてきました。また、紅餅がお餅のような形をしているのは、染め物の本場・
京都へ運ぶのに便利だから
。京都で舞妓さんが使う京紅も、このベニバナから作られているのです。というわけで、結局矢野左衛門は紅餅を食べられなかったのですが、せっかく手に入れたので、ベニバナ染めの赤いタンクトップを作り、番組特製の所さん像に無理やり着せたのでした。
一方、佐藤アナは
赤く染めるなら何もベニバナじゃなくたって良いはず
、とお花屋さんで赤い花をたくさん買い込んで、花びら染めに挑戦。すると、色はベニバナよりも若干薄めですが、
他の赤い花でもちゃんとピンク色に染めることができた
のです。しかし、
赤い花で染めた布とベニバナで染めた布をそれぞれ水洗いしてみると
、ベニバナ染めはそのままだったのですが、
赤い花で染めた方は色が落ちてしまいました
。一体なぜでしょう?
実は、その原因は
色素成分の違い
にありました。多くの赤い花の色素は
アントシアニン
とよばれる色素。アントシアニンは
繊維の分子とは結合せずに、繊維に付着しているだけの状態
なので、水洗いをすると簡単に色落ちしてしまいます。一方、ベニバナの赤い色素は
カルタミン
と呼ばれる色素。こちらは
繊維の分子と結合する性質があり、布にしっかりとしがみついている状態
なので、色落ちせずにしっかりと染めることが出来るのです。まさにベニバナは、染料に適した色素を持った花だったのです。
ベニバナの花は赤い染料や京紅にも使われていた!
ベニバナの種子から採れるベニバナ油と他の食用油の違い
は何なのでしょう?そこでこんな実験。健康な若者8人に、ベニバナ油で揚げたエビの天ぷらと、普通の家庭でよく使う天ぷら油(ナタネ油+ゴマ油)で揚げたエビの天ぷらを、食べられるだけ食べてもらいました。すると、
8人中7人がベニバナ油で揚げた天ぷらの方をたくさん食べることができた
のです。
考えられる理由は、
酸化しやすさの違い
。油は酸化してしまうと、匂いがきつく感じられるようになります。実は
ベニバナ油は、ナタネ油などの食用油に比べて酸化しにくい性質がある
のです。そのためベニバナ油の方が、さっぱりしていてたくさん食べることが出来たのではないかと考えられます。また、酸化しにくいベニバナ油は、生食にもむいていて
ドレッシング等にもぴったり
と言えそうです。