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万能調味料! しょうゆ
第822回 2006年3月12日


 お寿司におそば、煮物まで、和食に欠かせない調味料と言えば、しょうゆ。一口にしょう油と言っても、“たまりしょうゆ”“濃口しょうゆ”、最近人気の“丸大豆しょうゆ”なんていうのもありますよね。その違いは何なのでしょう?

 よく刺身などに使われる、濃い目のしょうゆが“たまりしょうゆ”。もともと、このたまりしょうゆがしょうゆの元祖なのだそうです。そこで矢野さんがしょう油の蔵元を訪ね、たまりしょうゆの作り方を調べました。
 しょうゆの原料といえば、もちろん大豆。しかし大豆を蒸して塊にした後、何やら白い粉が振り掛けられたのです。実はこの白い粉は“麹菌”という、発酵食品作りでよく使われるカビの一種だったのです。この麹菌が大豆に繁殖すると酵素を作り出し、この酵素がタンパク質を“うま味”成分のアミノ酸に、デンプンを“甘味”成分のブドウ糖に分解するのです。
しょう油・味噌  実は、この蒸した大豆に麹菌を振りかけるという工程は、以前紹介した味噌の作り方とまったく同じ。それもそのはず、しょうゆ作りの元は味噌作りだったのです!
 そして、麹菌のついた大豆を大きな桶に入れて、麹菌を殺すために塩水をかけます。この工程が、しょう油作りと味噌作りの違うところ。一方、味噌の場合は、そのまま塩を混ぜて麹菌を殺していました。しょう油は塩水をかけ、味噌は塩を混ぜるのです
 しかし、なぜせっかく加えた麹菌を殺してしまうのでしょう?実は麹菌は死んでしまっても、麹菌が作り出した酵素は働き続けるのです。しかも麹菌が死ぬと、今度は新しい菌が働き出します。それは“乳酸菌”。乳酸菌が、ブドウ糖を乳酸というまろやかな“酸味”に変える発酵が起こります。これを乳酸発酵と言います。
 これらの発酵を大きな桶の中で起こしながら、染み出た液をまた桶の上からかけ、濃くする作業を繰り返し、3年かけて、たまりしょうゆが完成します。“うま味”“甘味”“酸味”、そして塩水の“しょっぱさ”など、様々な味が補えるので、しょう油はどんな料理にでもあうのです。

所さんのポイント
ポイント1
しょうゆの元祖は刺身に使われるたまりしょうゆ。
そして作り方は、水分以外は味噌と同じだった!


 美味しくなるまでに時間のかかるたまりしょうゆの代わりに、短期間で完成するように開発されたのが“濃口しょうゆ”。濃口しょうゆは、たまりしょうゆの約6分の1の半年間で完成し、大量生産が可能なのだそうです。たまりしょうゆの作り方とは、どう違うのでしょう?
 実は、“濃口しょう油”の原料には、大豆の他に小麦も使っていたのです。その理由は、大豆のタンパク質は2〜3年かけないと分解されないのですが、小麦のタンパク質は分解が早いから
 しかし、大豆を使わないことでうま味成分は減ってしまわないのでしょうか?そこで、大豆に小麦・大麦・米を混ぜた3種類のしょうゆを作って、どのしょう油が美味しいかアンケートをとってみました。すると、5人中4人が大豆と小麦を使ったしょうゆが「一番味が濃くて美味しい」と言ったのです。
 実は、小麦には“グルテン”という成分が入っていて、これを麹菌の酵素が“ペプチド”という苦味成分に変えてしまいます。ヒトは“うま味”を感じて脳におくる神経経路と、“苦味”を感じて脳におくる神経経路が非常に近い場所にあるため、苦味もうまみとして感じてしまいます。よって小麦の苦味も、うまみに勘違いされるため、物足りなくは感じないというのです。
 さらに濃口しょうゆでは、麹菌によって小麦のデンプンが分解されて出来たブドウ糖を、さらに酵母が“アルコール”に変えます。そのため、濃口しょうゆには良い“香り”も付く、という新たな効果が生まれたのです。

所さんのポイント
ポイント2
濃口しょうゆは小麦も材料に使うので、短い時間で完成されるのだ!
この小麦が“苦味”と“香り”を産み、美味しさを補っている。


取り出した油  普通濃口しょうゆ作りに使われるのは、油を取り除いた脱脂大豆。戦時中、物資不足の折、大豆から油を取らなくてはならなかったことから脱脂大豆が使われるようになったのですが、最近では、そのままの大豆を使ったしょうゆが登場。これが人気の“丸大豆しょうゆ”。油の風味が加わり、より本来の味になるといわれています。
 ということは、丸大豆しょうゆには、読んで字のとおり油が入っているということ。確かに、70リットルの丸大豆しょう油から、わずか75ミリリットルではありましたが、油がちゃんと取れたのです



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