しぼりたて牧場の
牛乳
第823回 2006年3月19日
朝食に一杯の牛乳
って、美味しいですよね。我らが矢野さんの家も、一家揃って牛乳が大好き。そこで矢野さんが、
もっと美味しいしぼりたての牛乳を飲みたい!
ということで、牧場に向かいました。今週と来週の2回に分けて、牛乳が出来るまでを徹底的に科学します。
そもそも美味しい牛乳を出す
ウシは、何を食べて育てられているのでしょう?
干し草なのかと思いきや、実は乳牛には、
日本の気候に適した別の物をメインに食べさせている
というのです。
そこで矢野さんが、ウシのエサを調べるために近づいてみると、何やら
すっぱい匂い
がしてきました。見た目は、枯れて変色した草のようなのですが、一体何なのでしょう?
実はこれは、
“サイレージ”
といって、夏に収穫したトウモロコシの草や実を細かく切って、ビニールシートと砂で密閉しておいたもの。すると、その
草や実に、空気の少ない所で活動する乳酸菌が繁殖し草や実を発酵させ、保存食にさせる
というわけなのです。いわばこれは
漬け物
。
実は、ウシには干し草も与えていますが、
湿度が高く雨も多い日本の気候では干し草を作るのが難しく、なんと輸入しなければいけない
のだそうです。そのため、保存もできてウシも好きなサイレージも与えているというわけなのです。
牧場で見られるサイロ、実はこれもサイレージを作る施設だった
のです。
目がテンでは、
人間用のサイレージ
を作ってみることにしました。作り方は、とっても簡単。キャベツなどの葉野菜をビニール袋にいれ真空パックにします。それを、暖かい部屋に3日ほど置いておけば、人間用の野菜サイレージが出来るのです。早速、所さんが試食してみると、
「おいしい!」
と大絶賛。特にキャベツがお気に入りでした。
日本では干し草が作りづらいので、保存性が高くウシも好きな“サイレージ”という、漬け物のようなエサを与えている!
矢野さんがウシの世話をしていて気がつきました。なんと、
牛舎の中に、塩の塊が置いてある
のです。なぜなのでしょう?
実は、動物の体において、ミネラルバランスはとても大切。そのため、
ウシのエサに含まれるカリウムとナトリウムの量は、ほぼ1:1に保つ必要がある
のです。しかし、カリウムを豊富に含む草ばかり食べているウシは、ナトリウムが不足してしまいます。そこで、ナトリウムが多く含まれている塩を与える必要があったのです。
実は、
飲食店など入り口に置かれた盛り塩も、その起源は牛車のウシになめさせて客を呼び込むため
だと言われています。
草食動物のウシ、なぜその牛乳はタンパク質豊富な飲み物なのでしょう?
草にはタンパク質はあまり含まれていないというのに…。
実はその秘密は、ウシの体の中に隠されていました。なんと、
ウシには胃袋が4つあった
のです。焼肉屋さんでは、第1胃を
“ミノ”
、第2胃を
“センマイ”
、第3胃を
“ハチノス”
、第4胃を
“ギアラ(ギャラ)”
と呼んでいます。
ウシの第1胃の中から取り出したものを顕微鏡で見てみると、
原生生物や細菌
がたくさんいました。実は、
ウシの胃の中には、牧草をエサにして増殖する微生物がたくさん棲んでいる
のです。つまりウシが草を食べると、この微生物が増えていきます。そして増えた微生物を、なんと第4胃で消化してしまうのです。ウシは、
草のタンパク質だけではバランスが良くないので、この第1胃で増えた微生物を、第4胃で消化吸収し、タンパク源としている
のです。
ウシは胃の中の微生物を草で増やし、更に栄養源にしていた。
だから、牛乳はタンパク質が豊富なのだ!
1年中お店に並べてある牛乳。しかし、
乳牛はなぜ1年中ミルクを出す事が出来るのでしょう?
実は乳牛もヒトと同じで、出産しないと牛乳は出しません。そのため、
乳牛はみんなメス
で、なんと、いつも妊娠・出産を繰り返しているのです。農家の方は、
ウシが出産し牛乳が出始めると、またすぐに妊娠させて、1年中切れ目なく牛乳を採っている
のです。
ようやく牛乳をしぼれた矢野さん、しかし牧場の方は、このまま飲んではいけないと言うのです。なぜなのでしょう?続きは次週に。