所さん完食! 初
ガツオ
第831回 2006年5月14日
春に美味しい魚といえば
カツオ
。
初ガツオ
は江戸時代から、非常に重宝されてきました。そこで今回は、久々登場の科学の素浪人、矢野左衛門が
春と秋の2回旬を迎える魚
、カツオを科学しました。
まず矢野左衛門は、初ガツオ漁が行われている千葉県の勝浦漁港を訪れました。すると早速、あることに気づいたのです。それは、
水揚げされたカツオにしま模様が入っている
こと。しかし、水族館などで見られる
生きたカツオにはしま模様はありません
。一体、どういうことでしょう?
実は、このしま模様、
魚が興奮したときに浮き出る模様
なのです。
カツオが捕まえられたとき浮かび上がり、死んだ後もそれが残っている
と考えられているのです。
今が旬の初ガツオ。ところが驚くべきことに、
初ガツオは9月頃まで捕れる
というのです。一体、どういうことでしょう?
そもそもカツオは、2月頃、エサのイワシなどを追って
九州から北海道に黒潮にのって北上します
。これを
初ガツオ
、または
上りガツオ
と言います。江戸時代の頃は、冷凍技術や輸送方法がまだ発達していなかったため、カツオが上っている時期に、その
海の近くの人しか食べることができなかった
のです。
しかし現代では、
北海道沖で捕れるカツオでも、新鮮なまま日本中で食べられる
ようになりました。そのため、昔は短い期間しか食べることができなかった初ガツオも、今では9月まで食べることができるのです。
ちなみに9月になると、
カツオは北海道沖でUターンし、今度は産卵のために南下して行きます
。これを
戻りカツオ
といい、エサをたっぷり食べているので、脂がのっています。実は、
初ガツオはさっぱりとした味わい
で、
戻りガツオは脂がのって濃厚な味わい
となり、それぞれ魅力があるのです。
カツオは太平洋を北上する初ガツオ(上りガツオ)と、南下する戻りガツオがあり、旬が2回ある珍しい魚なのだ!
カツオ料理といえば、
カツオのタタキ
。軽くあぶり、叩いて塩味をなじませる刺身です。しかし、
なぜカタタキにするのでしょう?
その理由は
臭み
。カツオのような赤身魚は、筋肉に酸素を運ぶ役割のある
ミオグロビン
と呼ばれる物質を多く持っていて、これが臭みの原因になってしまうのだそうです。しかし、
同じ赤身魚であるマグロの刺身は臭くないし、タタキにしない
ですよね。一体、何が違うのでしょう?
実は、この臭みが多い部分というのは、
血合い
と呼ばれる部分。なんと
マグロは、刺身にする時、血合いを取り除いている
のです。しかし、カツオを食べる時は、わざわざ血合いを取り除いていません。
さらに、この臭みは血合いだけでなく、血液にも含まれています。実は
マグロは、釣り上げられるとすぐ尾びれを切って、血抜きをします
。ところがカツオは、一尾あたりの単価も安く大量に捕れるので、わざわざ血抜きまではされていないのです。つまり
カツオでも、マグロのように血抜きをして血合いを取り除けば、臭みはなくなる
はずなのです。
さらにカツオは死ぬと、うまみ成分である
イノシン酸
が体内に増えます。そこで、カツオが死んだ後、いつイノシン酸がピークになるか測定してみると、なんと釣り上げてから1日後が、一番多くなることがわかりました。
これらのことを踏まえると、釣り上げてすぐ血抜きをし、血合いをとって、1日たったカツオは、普通の刺身でも美味しいはず。早速、所さんが試食すると、なんと「面白いほど美味い!」と大絶賛。マグロそっくりになったそうです。
カツオは臭みがあるのでタタキにする。
しかし、血抜きをして血合いをとり1日経ったカツオは、刺身のままでも美味しいのだ!
もっとカツオを美味しく食べたいということで、
カツオの開き
を作ることに。
魚を開きにすると、うま味成分のイノシン酸が増える
ので、きっとカツオもさらに美味しくなるはずという発想です。
しかしカツオは、アジなどに比べて身が厚いので、1夜干しではなく2夜干しにしたりと、干物屋の方も苦労しながらも、ついに目がテン特製!カツオの開きが完成しました。
そして、スタジオで所さんが試食すると、「とてもうまい!」とこれまた大成功。しかし、大きすぎて焼きにくいという理由から、商品化にはほど遠いそうです。