世界最長の
コンニャク
第853回 2006年10月22日
健康ブーム真っ盛りの今、注目を集めている
こんにゃく
は、食物繊維が豊富のため「お腹の砂おろし」と呼ばれるほどです。そこで今回は日本の伝統食、こんにゃくを科学します。
こんにゃくの原産地は東南アジアで、千年以上前、仏教の伝来と共に日本にやってきたと言われています。そして、
こんにゃくを作っているのは世界中でも日本、中国、ミャンマー、スリランカの4ヶ国
で、なんとその
95%を日本が消費
しています。ちなみに
日本人一人当たりの年間消費量は平均2kg
もあり、こんにゃくはまさに日本の食文化なのです。
ところで
こんにゃくは何からできているかご存知ですか?
実は、
サトイモ科こんにゃく属の芋
からできています。そこで矢野さんが全国の95%もの生産量を誇る群馬県の畑を訪ねました。すると不思議なことに、畑によって葉っぱの大きさが全然違いました。そこで別々の畑から一本ずつ芋を掘り起こして並べてみても、確かに大きさが違います。実は
こんにゃく芋は収穫まで3年もかかる
のです。まず、こんにゃく芋は
生子(きご)と呼ばれるタネ芋
を植え付けて育てます。
これが芽を出し、秋に収穫すると
1年生
と呼ばれるこんにゃく芋になります。この1年生は
冬の間大切に貯蔵庫に保存
されます。そして
翌年の春に保存していた芋をまた畑に植えます
。こうしてできたものは
2年生
と呼ばれ秋に収穫し、
再び冬の間保存
します。そしてまた翌年の春に芋を植えつけさらに大きな
3年生の芋を作りようやく収穫できる
のです。こんにゃくは実に手間ひまかけられて作られていたのです。
さて、掘り出した生のこんにゃく芋を矢野さんがほんの少し食べてみると、口の中がだんだん痛くなりギブアップしてしまいました。この痛みはこんにゃく芋に含まれる
シュウ酸
という成分が原因でした。では
なぜこんにゃくは食べることができるのでしょう?
そこで、こんにゃくの製造工場を訪ね作り方を見学しました。まずこんにゃく芋は、長い期間保存が出来るようにスライスしてから乾燥させ粉末にします。
シュウ酸は熱に弱いため、粉末にする工程で殆どなくなってしまいます
。すると、いきなり
黒っぽい粉
が出てきました。実はこの
正体はヒジキなどの海藻類
。そこにこんにゃく芋の粉末を入れ弾力が出てくるまでよくかき混ぜます。そして
石灰
を溶かした液体でこんにゃくを固めて完成です。こんにゃくの独特な歯ざわりは石灰によるものだったのです。
さて、
こんにゃくには白と黒
がありますが東京では基本的に黒こんにゃくが主流です。そこで
一体どの地域で白と黒は変わるのか、全国各地でこんにゃくの色を調査
してみました。東海道を西へ進み、名古屋で聞いてみると調査した30人全員がこんにゃくと言えば「黒」だと答えました。続いて、大阪、広島、さらには九州博多でもやはり黒だったため、
東京から西は黒こんにゃく圏
だという事がわかりました。次に東日本です。栃木県宇都宮のおでん屋さんを訪ねると、ここでも黒こんにゃくでした。隣の福島県も黒でした。さらに北の
仙台を訪ねると、遂に白こんにゃくを発見
しました!ここ仙台ではお店はもちろん家庭でも白こんにゃくが一般的だったのです。その先の
山形県、岩手県も白こんにゃく
だったため
東北地方に白と黒の境目がある
ようです。話によると
昔からこんにゃく芋が栽培できた地域が黒こんにゃくで、栽培できない地域が白こんにゃく
だというのです。ではなぜ栽培できた地域が黒こんにゃくなのでしょうか?実は、
昔はこんにゃく芋を皮ごとすって、さらにこれを固める為に藁などの燃えカスから灰汁をとっていました
。これらを混ぜていたためこんにゃくは黒い色をしていました。ですから
こんにゃく芋が昔から栽培できた場所ではこんにゃくは黒いもんだ!ということでわざわざひじきを入れていた
のです。ちなみに現在の黒こんにゃくに入っている海藻類は味がしみこみやすいという利点もあるそうです。
昔はこんにゃく芋を皮ごとすって混ぜていたので黒かった!今でもそれに合わせて、わざわざひじきを入れて黒くしているのだ!
ところで、
こんにゃくの花
ってあまり見たことがないですよね?実はこんにゃくの花は
4年を越えないと咲かない
ため農家の方でさえあまり見たことがないそうなのです。こんにゃく芋は
3年で収穫するので必然的に花を見ることがない
のです。こんにゃくの花は不思議なことにおしべとめしべは花の内部で上下に分かれています。この花はハエなどを呼びよせ受粉するために、動物が死んで腐ったような匂いを出し、めしべに実をつけるのです。そして驚くことにこんにゃくの花はギネスブックに
世界最長の花
として載っています!それは成長すると3mにもなる
スマトラオオコンニャク
の花。7年に一度しか咲かないとも言われ、別名「死体花」とも呼ばれ、なんと
世界一臭い花としてもギネスブックに載っている
のです。
さて、こんにゃくにはほとんどカロリーがありません。こんにゃくの成分は97%が水分で残りの3%が食物繊維。なんとカロリーは100g中5kcalしかないのです。そこで、
ラットを使ってこんにゃくダイエットの効果を検証
してみました。Aグループは普通の食事、Bグループは食前に液状こんにゃくを摂取させてから普通の食事をしてもらいました。これを10日間続けた結果、実験前A、Bそれぞれの中性脂肪の数値は237でした。実験後のAグループの中性脂肪の平均値は変わりませんでした。一方Bグループは216で実験前より9%も減ったのです。実は、こんにゃくはカロリーがほとんどなく、食物繊維で胃では消化されず、
胃の中で混ざった他の食べ物と一緒に腸に入っていくので、消化が遅くなり脂肪になりにくい
のだそうです。ということは、
人間もこんにゃくで脂肪を減らすことはできるのか
、矢野さんがチャレンジしてみました。実験は
毎食食前30分前に1・5枚分のこんにゃくを食べるだけ
です。こんにゃくを食べると、20分後には胃が活発に動きはじめ満腹感を感じるので食べすぎも防げます。そして
実験開始から15日
が経ちました。すると
血液中の中性脂肪が前回の165から143へ減って、基準値の範囲に入った
のです。矢野さんの体重はあまり変化ありませんでしたが、ダイエットは体重が減ることよりも血液中の中性脂肪がちゃんと落ちてくることが始まりということで、こんにゃくダイエットは見事成功でした。
こんにゃくを食べると、食物繊維の効果で胃の中の他の食べ物の消化が遅くなり、脂肪になりにくいのだ!